イギリスのロックバンドBlurのベーシスト、アレックス・ジェームスが、隆盛を極めるファスト・ファッションの人的・環境的搾取を明らかにし、ファストに抗い、サステナブルを旨とするファッション業界の新たなにムーヴメントの立役者たちにインタビューしてまわる1時間強のドキュメンタリー。
そのまま学校教材にできるほどで、端的に「一見安い物は、誰か(どこか)に犠牲を強いている」と言うことに尽きる。ご丁寧にラストでは教訓をリストアップしておさらいまでしてくれる。
しかし、人口増加に対応した合成繊維(事実上、プラスチック)の登場により、ファッションがあまねく所得階層に行き渡り、その民主化に貢献したこともまた事実であり、大量消費による環境破壊が逆説的に人類の脅威となったことはまことに皮肉である。
膨張する人口が皆、高級でサステナブルな天然素材に切り替えればハッピーだが、それは不可能である。「衣食足りて礼節を知る」、すなわち環境保護など富裕層の消費の「言い訳」に過ぎないと断じることもできよう。そんな悩みはきっと「贅沢」に違いない、と。
とまれ、ファスト・ファッションへの享楽的消費に一石を投じる優れたドキュメンタリーではある。シーズン・サイクルで着捨てるような買い物は、しないに越したことはない。
