とむ

スローイング・ダウン ファストファッションのとむのネタバレレビュー・内容・結末

3.0

このレビューはネタバレを含みます

ファストファッションは以下の問題がある。
・先進国は繊維や生地の生産を人件費の安い発展途上国に委託しきっており、搾取の構造がある
・ファストファッションに多用される合成繊維は生分解されないのでリサイクルが難しい
・衣服の質が低く、生産購入廃棄のサイクルが短く、ゴミが増える

これらの問題への解決策として、この映画はウールを推している。
天然由来で生分解可能、長く着ても匂わない、型崩れしない、工場生産でないハンドメイドモノもあり環境にやさしい、など。

だが羊のゲップに含まれるメタンガスの温室効果も環境問題として有名で、例えばニュージーランドが排出する温室効果ガスの43%は羊と牛由来のメタンガスである。
本作で紹介があったように、地球環境に悪影響を及ぼす産業ワーストスリーは
1. 鉱業
2. 酪農業
3. 繊維業
なので合成繊維をウールに代替しても、環境への悪影響が3位から2位に移るだけに見える。

ただ物事はそう単純ではなく、人々が本当に「良い物を長く着る」ライフスタイルに移行したとした際のウールの需給で考えなければならない。
その場合衣服の生産量が減るおかげで温室効果ガスをはじめとする地球環境への悪影響は軽減されるのかもしれない。
しかし単純に衣服の流通量が減り、ファッション業界は大打撃を受けそう。
加えて先進国対新興国の搾取構造が無くなるわけではなく、新興国の繊維業で働き口を無くした人たちが他の産業に移るだけとなる。
この搾取構造の本質は、他国に輸出できる価値ある物の多寡であり、ファストファッションだけが悪者なのではない。資本主義に内包される問題と言っても良いと思う。

ウールが全てを解決するわけではなさそうだが、本作が主張する、「着ている服の素材が何で、産地はどこで、捨てるとどこに行くのか」を日頃から考えることは大事だと思った。
ただ考えが浅い感じが滲み出ていて、グルテンフリーとかベジタリアン、ヴィーガンとかと同じ匂いがした。
とむ

とむ