maverick

ザ・ゴールドフィンチのmaverickのレビュー・感想・評価

ザ・ゴールドフィンチ(2019年製作の映画)
4.1
2019年のアメリカ映画。主演は『ベイビー・ドライバー』のアンセル・エルゴート。


上質な人間ドラマ。テロによる爆破で母を失った少年が、自責の念に囚われつつも成長してゆく姿が描かれる。絵画を中心とした物語でもあり、作風からは芸術性をも感じさせる。描かれるのは主人公テオの少年期から青年期までだが、149分の時間の中に一人の人間の人生を集約したかのような深みのある作品性だ。

父は蒸発し、母はテロでこの世を去る。その後も波乱の人生を辿るテオ。子供の時の環境や体験が、後の人生にどれほど影響を与えるかを痛感させる話である。保護された先での暮らしは穏やかなものであったのに、出戻った父親のせいで悲惨な人生を送ることになる。この父親がまたどうしようもない人間。こういうのを見せられると、実の親と暮らすのが必ずしも正しいとは言えないなと。そんな中でも彼の救いになったのは、親友や周りの優しい大人たちの存在。それがなければ人生に希望も持てなかったことだろう。

人生とは数奇なもの。テオの境遇は不幸の連続だが、それらの出来事があって出会う人もいる。運命とも呼べる人達との出会いは、彼の人生において必然とも思える。自分達の人生もそうだ。何か一つでもずれていれば今の人生にはなっていない。全ての出来事が一つに繋がっている。人生とは何とも面白いものだ。

主人公テオの少年期は『ピートと秘密の友達』のオークス・フェグリーが。親友ボリスを『ストレンジャー・シングス』のフィン・ウルフハード。その成長後を『ダンケルク』のアナイリン・バーナードがそれぞれ演じる。ニコール・キッドマン、ジェフリー・ライト、ルーク・ウィルソンらが脇を固め、渋みのあるキャスティングが上質なドラマを盛り上げる。『GOTHAM/ゴッサム』『スクリーム』など、テレビドラマで活躍するウィラ・フィッツジェラルドも印象的な役で出演していて目を引いた。


原作は小説とのことで、そうだろうなという印象。話に面白味があり、考えさせられる部分も多いが、映画としては少々長さも感じた。でも雰囲気的には好きな作品。演者の渋みも光る良作である。
maverick

maverick