ひこくろ

劇場版 響け!ユーフォニアム~誓いのフィナーレ~のひこくろのレビュー・感想・評価

4.5
主人公の久美子が一年生の時は、本気かどうかの温度差が主に主題だったが、二年生になると、それだけにとどまらない人間関係が前面に出てくる。
先輩との関係、後輩との関係、さらに先輩・後輩間の関係。
そこに、実力差という問題が絡んでくるのだから、話は複雑だ。

自分よりも下手な先輩に対してどう振る舞っていいのかわからない一年生。
自分よりも上手な一年生に対して、それでも自然でいようとする上級生。
登場人物はとても多いのに、それをごく自然な流れで見せる。
かつ、それぞれの考えの違いにより生まれる軋轢や対立を、ひとつひとつ丁寧に描いていく。

前作まであったスポ根のような熱さもよかったが、今作の深みはストレートに心を抉ってくる。
部活に馴染めない美玲、奏者をやめてマネージャーに専念する加部ちゃん先輩、気をつかわれて憤る夏紀先輩。
それぞれのエピソードのエグさには胸がしめつけられるようだ。
しかも、そこに毎回、奏という一年生の得体の知れない怖さが絡んでくる。
こうして興味を引いておいて、奏のエピソードにつなげていく構成は素晴らしいのひと言だった。

最後のコンクールシーンで演奏曲を冒頭から最後までまるまる流す大胆さも健在。
それによって、これが学園ものであるとと同時に、音楽の映画であることも強烈に意識させる。
学園ものとしても、音楽映画としても、非の打ちどころのない傑作だと思った。
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