茜

戦慄の絆の茜のレビュー・感想・評価

戦慄の絆(1988年製作の映画)
3.7
名作が多いクローネンバーグ故どうしても埋もれがちな作品のような気がするけど、実は隠れた傑作だと思う。
休日の昼間に初鑑賞して、夜にもう一度観返したくなって再鑑賞。
何度も観て色々あれやこれや考えてみたくなるスルメ映画でした。

婦人科医を開業する一卵性双生児の兄弟と、そんな二人のもとへ診察に訪れた女優。
彼女と出会い関係を深めるうちに、少しずつ兄弟の関係に歪が生じていく。

第一印象はとにかく映像が綺麗。
真っ赤な手術着とおぞましい形の医療器具の時点で頭イカれててかっこいい。これだけでも満足出来るレベル。
女としては観てるだけで顔が歪みそうな痛々しいシーンも多いし、まるでエイリアンみたいな造形の手術器具が身体に入ってくるとか想像しただけでドン引きなんだけど、そんなおぞましさすらどこか官能的で美しく見えちゃうんだからやっぱりクローネンバーグの感性って独特。

性格の異なる二人の兄弟の話であり、一人っ子の自分にはイマイチ想像し難い部分も多かったんだけど、一人の人間のお話として捉えることでだいぶ分かりやすくなりました。
一人の人間の中に潜む二面性、そのバランスが崩れ始めた時に一体何が起こるのか。
兄弟のもとを訪れた女優の子宮が3つに分かれているという特異な形も、本作において重要な意味を持つ。
奥深く悲しいお話ではあるんだけど、これが事実をもとにしてるってんだから世の中想像を超える出来事が沢山あるもんだね。
茜