深獣九

戦慄の絆の深獣九のレビュー・感想・評価

戦慄の絆(1988年製作の映画)
4.0
体の一部が繋がったまま生まれる双子がいる。エリオットとビバリーは魂が繋がったまま、生まれてしまった。

本作の題材は「双子の異常な絆」

体ではなく魂が繋がったまま生まれた双子は、どのような人生を歩むのか。離れたくても離れられない。それが物理的なことではなくとも、いやスピリチュアルなことだからこそ、些細なことで恐怖と狂気へ転落してしまうのかもしれない。
転落の果てに気づいた“絆”が、彼らをさらなる地獄へといざなったのか。

本作の主人公は双子の医者。ふたりで診療所を経営し、社交的な兄は人前に出る仕事、内向的な弟は診療と研究、それぞれ役割分担し順風満帆な人生を歩んできた。だが、診察に来たひとりの女性が、彼らの関係に影を落とす……。

途中まで、女性をめぐる三角関係がこじれる話と思っていた。だが、クロ監督が、そんな他愛もなく終わらせる訳がないのは、前述の通り。
物語は静かに進み派手さはない。だが暗く沈んだ映像とトーンや禍々しい手術道具、法衣にも似た真っ赤な手術着、薬物、繋がる胴体など、クロファン大満足な狂気の作品だ。

本作の双子の関係は、強烈な共依存であるとも言える。いままでそれを意識しなかったことと、大きなトラブルもなかったことが、異常性に気づかなかった原因か。
また、薬物が身近にあったことも、崩壊が加速する大きな要因であった。クロ監督はしばしば薬物の恐ろしさを作中に描く。もしかしたら実際、過去になにかあったのかもしれない。

お手製の医療器具も見過ごしてはならない(無論見過ごさない)。まるで地獄のアマゾンで取り寄せたような形状の、ぴかぴかと光る禍々しい手術道具はコアなクロファン心を掴んで離さない。欲しい。化粧箱に入れて飾りたい。
オープニングの人体解剖図と医療器具のイラストも完璧だった。

原題は『DEAD RINGERS』。DEADには「極めて」との意味があるようだ。RINGは「輪にする」。題名に込められた思いを汲み取れば、「究極の絆」であろうか。彼らは魂が繋がり離れられない双子だった。その気持ちは、双子でもなければ体も心も離れている私にはわからない。
深獣九

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