えむえすぷらす

ビューティフル・ボーイのえむえすぷらすのレビュー・感想・評価

ビューティフル・ボーイ(2018年製作の映画)
4.0
意外なキャスティングで薬物依存症とはどのようなものか描きこんでいる。父と息子それぞれの本を原作としているが映画上は原作の違いは感じない。終わりなき戦いになる事を示している点が本作の最も大事な主張なんだと思います。

この話は息子が大麻など手を出していて、父親もそれぐらいならと思っていたらアンフェタミンを常用するようになっていた。
アメリカで急増したオピオイド処方鎮痛薬使用とは異なる経路で入って常習化している。
離脱症状は薬物が切れて起きる症状でそれ自体は一過性で済む。ただ問題はまた薬物を摂取したくなる症状がある事でこれがクリーンな期間が途絶える原因となる。また薬物体制ができるため摂取量増加、より強い薬物への切り替えを起こす。ヘロインなどオピオイド系薬物は呼吸抑制作用があり、過剰摂取で呼吸が止まる事で死ぬ。これがオーバードーズの起きる原因です。オピオイド拮抗薬を投薬するとこのオピオイド薬剤は作用しなくなるため急激に回復する。この事から米国の救急隊はオピオイド拮抗薬が必需品となってきている。
映画の描写はもっぱら離脱してもクリーンな日数が途切れ再度戻ってしまう中で過剰摂取死が起きたりしている様子を描いている。

オピオイド処方鎮痛薬の場合、製薬会社が安全かつ強力な鎮痛薬としてガン患者のケア以外にも利用が推進され、その中で依存症患者が続出し鎮痛剤の不正処方など横行する事になった。これらの薬剤は白人に積極的に処方されるという人種偏見もありオピオイド危機での患者は白人に集中。トランプ政権や共和党は麻薬は摘発を求め、一方でオピオイド危機は救済を主張しておりその姿勢自体が差別的だとの指摘も出ている。

いずれにせよ薬物依存症は回復はするが慢性疾患同様に脳に薬を摂取したいという欲求は残る。終わりなき戦いであり、その願望に芽を出させないために仲間同士のミーティングなどは続いていく事になる。薬物依存症患者の史実由来作品で最後に何年間クリーンだというようなクレジットになるのはこの事を踏まえている。