ユカートマン

ビューティフル・ボーイのユカートマンのレビュー・感想・評価

ビューティフル・ボーイ(2018年製作の映画)
3.7
裕福な家庭に生まれた覚醒剤中毒の10代の少年と彼を支える父親の数年間を静かに、そして美しい俳優を起用してなるべく美しく、かといって依存症を美化せず、描いた作品。

あんなに金かけても命からがら依存症は治らないんだから、貧乏人のヤク中はバタバタ死んでいくだけなんだろうなと思ったらエンドロールでアメリカの50歳以下の死因の一位はオーバードーズと出てきた。日本の一位が気になって調べたら自殺とのこと。日本がたまたま薬物が欧米ほど市民権を得てないだけで、自殺もODも苦しみから逃げている点で実質同じようなもんだと思う。「依存症は本当の問題ではない。本当の問題からの逃げ方だ」という台詞が良かった。家が金持ちで物質的に満ち足りても精神的に満たされなかった故に薬物に手を出してしまったニックが経済力がメンタルヘルスのなんの保証にもならないということを証明していた。親が離婚して、親権のある方の親について行ったら再婚して子供がポコポコ生まれ、継母があんなに良い人(逃げるニックを実父ではなく継母が泣きながら追いかけてた)でも、母親の違う幼い弟妹たちから愛されてもニックの疎外感は計り得ないものだったのかもしれないし、将来が不安だったのかもしれない。ただ年齢相応にドラッグを火遊び感覚で楽しんでいたら抜け出せなくなった可能性は本当の問題があるとすれば低いんじゃないかなと思った。家族など関係の近い人から見れば普通の姿からヤク中の廃人になる姿は死人同然、「喪中」という台詞があったがまさに的確だと思った。モデルとなった本物のニックさんの無事を祈る。
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