南

The Witch/魔女の南のレビュー・感想・評価

The Witch/魔女(2018年製作の映画)
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パク・フンジョン監督作品は今作が初観賞。

以下、パーフェクネタバレです。

元々アニャ・テイラー=ジョイの『ウィッチ』が大好きで、こちらの『ザ・ウィッチ』も「同じタイトルや〜オカルトホラーかな」と気になっており、そして続編も公開されるとのことでようやく観ました。

「超能力者や人間兵器を作る研究所から抜け出した主人公」

という無条件にアガる設定は『仮面ライダー』『ストレンジャーシングス』『炎の少女チャーリー』『ブラックウィドウ』などなど枚挙にいとまがありません。

さいきん流行りの『地獄楽』なども広い意味でその類型に入れて良いでしょう。

まがまがしい人体実験の記録画像を羅列する『マリグナント』風のオープニングタイトルに始まる今作も、いかにも悪そうな組織から少女が逃げ出すシーンで幕を開けます。

しかし中盤までは大きく物語を動かしません。

不穏な始まりから一転して、貧しい主人公一家を気づかう人々の人情、親友に言われるがまま主人公がTVスターにのし上がるワクワク展開など、ティーンエイジャーの青春を描いたドラマが続きます。

主人公が軽トラに乗り青空のもと緑豊かな田舎道を走り抜けるのどかで美しい光景を観てた頃は、後半であんな血みどろの地獄絵図が繰り広げられるなんて想像しようがなかったよ!

だからこそ「事態に振り回される善なる少女」と思われた彼女が唐突に「冷酷無比の最強戦闘マシン」と化す展開には唖然としました。

あれ、オレ『フロム・ダスク・ティル・ドーン』観てたっけ?と思うほど尋常でない落差!

特に敵組織のボスと対峙したときの眼と薄ら笑いが強烈。

『真実の行方』終盤におけるエドワード・ノートンを思わせて本当に怖いのと同時に、圧倒的すぎる強キャラ描写が非常に痛快です。

ジェイソン・ボーンの派生キャラかと思わせて、実は記憶喪失でも何でもない悪賢い人物と明らかになるところも、過去作品への愛に加えてひねりが効いた脚本でうまいな〜と。

「こいつサイコパスっぽいな」と観客に思わせた男の子ではなく、純朴と思われた主人公こそが手のつけられないサイコキラーだったりと、何から何まで騙されました。

常に醒めた笑いを張り付かせながら、必死に立ち向かってくる敵たちを余裕でボコる姿は『呪術廻戦』の宿儺かと思いました。

主人公の親友を演じたコ・ミンシもまた非常に良い!
『シャンチー』のオークワフィナを思わせる底抜けに明るいコメディリリーフで、前半の明るいドラマの推進力として今作に華を持たせています。

『キル・ビル』の栗山千明や『キングスマン』のガゼルなどに連なる「戦闘兵器パッツン前髪ガール」のチョン・ダウンも良かった。

ハリウッドのビッグバジェット映画のような予算がなくとも、ここまで満足度の高いアクション映画が作れるという良いお手本でもありました。

本作はトリロジーになるとのこと。続きが本当に楽しみ!
南