TAK44マグナム

The Witch/魔女のTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

The Witch/魔女(2018年製作の映画)
4.8
覚醒!超人女子高生のスーパーバトル!


一見朴訥な酪農JKが、実は人為的に造られた究極の戦闘マシーンだったという極めてマンガチックな題材を大真面目に魅せちゃう、韓国発のハイパー・ヴァイオレンス・アクションムーヴィー!
何よりも、容赦なくクレイジーな少女の凄まじさに心奪われるサイキックノワール!
こういうの大好きです!
青年誌で人気でそうな、完全にマンガ。
もう、たまらん!

メチャ素朴なルックスながら抜群の演技力で、幼気な少女(ゆで卵を頬張る表情がキュート)から覚醒後の冷酷無比な戦闘マシーンまで完璧にこなしたのはキム・ダミ。
本作はパート1と銘打っていることからも明らかですが少なくとも二部作以上になるわけでして、今後どのように主人公ジャユンに変化が現れるのかまだ分かりませんが、どのようなジャユンでも演じられるであろう逸材ですね。
そんなキム・ダミと比べて、どちらかというと普遍的な美少女が友人ミョンヒ役のコ・ミンシ。
コロコロとした雰囲気が実に可愛い女優さん。
敵となる人間兵器を演じたのは「新感染ファイナルエクスプレス」で野球部員役であったチェ・ウシク。
本作でも列車に乗って現れますが、バットなんて要らんのです。
なにせ兇悪な超能力戦士ですからね。肩がぶつかった相手に喧嘩ふっかけて瞬殺しちゃいますよ。
怖っ!
でも、ちょいと哀しさを背負った役柄でもあるので、そんな影があるところが巧いです。
あと、狂気のドクターを演じたチョ・ミンスは目の感じが風吹ジュンに似ているような気がしましたよ。


脳科学者のドクターペクの元、人間の潜在能力を100%解放した人間兵器を創造する研究が秘密裏に行われていたが、8歳でありながら抜群の戦闘力と暴力性を持つ「少女」をはじめとした子供達を制御できないことを悟った「会社」は研究の破棄を決定、子供達は全員、廃棄処分されたはずであった。
しかし、「少女」ひとりが逃走、とある酪農家の夫妻に拾われる。

「少女」は記憶を失っていた。
夫妻は彼女を引き取り、ジャユンと名付けた。
そして数年が過ぎ、高校生になっていたジャユンは親友のミョンヒに促され「スター誕生」というテレビ番組に出演する。
優勝賞金で認知症の母親の治療代を捻出する為であった。
だが、そのステージで特技として(超能力を使った)マジックを披露したことから、彼女を探していたドクターの部下に発見されてしまう。

番組の準決勝に出るためにソウルへと向かう列車で、謎めいた男がジャユンに話しかけてきた。
ジャユンの過去を知っている素ぶりを見せるその男こそ、実はドクターがアメリカから呼び寄せた、ジャユンと同じ「第2世代の人間兵器」であった。
刻一刻と迫る対決の時。
様々な思惑が交わる中、ついにジャユンが覚醒する。
はたして、ジャユンは自由を勝ちとれるのか?
しかし、事態は思わぬ方向へと舵をきり始めるのであった・・・!


前半は適度なペースで、じっくりとジャユンの周辺を描き、同時に彼女の過去を知るドクター達の動向も追う展開。
アクション映画ながら、中盤までは殆どアクションらしいアクションシーンがありません。
これは賛否両論でしょうね。
しかし、だからといって退屈ということもなく、重い悩みを抱えながらも健気な女子高生の日常と、じわじわと敵が距離を詰めてくる緊迫感がスムーズに往来、パズルのピースをはめ合わせるように融合してゆくのが非常に巧みに紡がれます。
その推進力となっているのがミステリアスなジャユンの出自です。
研究所で何が起きたのか?
失われた記憶ば蘇るのか?
彼女を追う謎の集団の真意は?

この時点では謎ばかりで五里霧中な話ではあるのですが、ジャユンが捕縛されてから一気に、エンジンに空気を送り込んで爆発力を高めるターボシステムの如く弾けるわけで、前半は(このカタルシスを感じさせるために)あえて抑えていたのが分かります。
序盤抑えて走っていたレーシングカーが、後半に入った途端にアクセル全開でライバルをぶち抜いてゆく。俄然、レースは盛り上がりますよね。
それと同様、一気呵成に無双する少女の姿に我々のハートは燃え上がり、ヒートアップするのです!

本当のジャユンが目覚める時、物語を覆っていた霧が晴れ、スッキリしたかと思ったら突入する怒涛の鬼アクション!
もう凄すぎます!
終盤に爆裂するアクションシークエンスは最高にアグレッシブでエモりまくってイケイケ!
その破壊力たるや、まるで大噴火、ビックバンですよ!
「マトリックス」や「ターミネーター」から影響を受けたようなヘヴィな肉弾アクションに差し込まれるサイキック描写が実に良い按配で、新鮮なアクションデザインが楽しめました。
超能力が隠し味程度だったのは意外でしたが、これはこれで正解かもしれません。
銃やナイフをサイコキネシスで動かしたりするなど、その使い方は地味ながら、格闘戦や銃撃戦に織り交ぜることによって超能力の存在を際立たせているんですよね。

ジャユンをはじめとした人間兵器たちは脳力を100%使えるので、超能力だけでなく、知力、体力、そのほか全ての性能が通常の人間とは桁違いで比べものになりません。
おまけに暴力性を高めてあって、高度な訓練を受けた戦闘員を相手にしても、笑顔を絶やさずに瞬殺可能。
しかも、ウルヴァリンなみの代謝能力まで備わっていて、頭部を破壊されないと死なないアンデッド仕様ときています。
なに、この圧倒的なパーフェクトソルジャー!
そんななので、事態の収拾に赴いた「会社」の戦闘員たちを相手どったジャユンたちが一方的に無双しまくるのがクライマックスとなります。

そして、残った人間兵器同士の血みどろの死闘。
ちょっとDAOKOを思い起こさせるクールな女戦士の冷酷さにもシビれましたが、それ以上にジャユンが範馬勇次郎の如く、この作品世界で他者を寄せ付けない絶対的な強者であるというのが驚きでした。
「マトリックス」のネオもそうでしたが、その強さもカタルシスを感じさせる材料なんですよね。
感情移入は難しいですが、(女子としては)新鮮な主人公像に引き込まれましたよ。


いやはや、兎にも角にも面白い。
どうしても異次元的なアクションに目を奪われがちですが、巧妙な脚本も効き目抜群で、張られた伏線に膝を打つこと請け合いです。
韓国映画にこれほどのモノをみせつけられてしまうと、似たような題材を扱った「ストレイヤーズクロニクル」など邦画アクションの完成度が日本人として少し哀しくなってしまいますね・・・。
技術や予算の問題もあるでしょうけれど、かなりセンスによる部分が大きいと思うので邦画にも頑張ってほしいと思わされる作品でした。
早く、早く続きが観たい〜!
ダークなアクションものがお好きなら、特にオススメですぞ〜!
傑作!


セル・ブルーレイにて