ルイまる子

愛がなんだのルイまる子のレビュー・感想・評価

愛がなんだ(2018年製作の映画)
4.3
前から見たかった本作をやっと視聴!なぜこんなに愛されている映画か理解した。なかなかの名作だ!ところで、恋の映画と見られているが、厳密には簡単に説明できないところがある。恋という感情に見えて実は、自分の安全圏から出なくて済む何がしかの精神活動をしてるだけなんじゃ?恋の「疑似体験」で相手に苦しめられ悲劇に身を落として酔ってるだけじゃ?だって相手の事を少しも理解してないし、しようともしない。自分しか見てないからね。

今まで何もやる事がなかった人が、あ、打ち込める事が出来た!っていうお話と解釈しました。

【ココから若干のネタバレ】「ストーカーの反省会」とは言い得て妙!このシーンでなんと葉子のお母さん役に大好きな 筒井真理子が出てきた!これだけでも儲けもの!だけど、年越しを50代の女性が自分の娘の友達二人と餃子っておかしいでしょ?笑 娘不在で。。笑 いやいや誰よりも娘を心配してるからこそ友達に感謝する気持ちはよく分かる。だが、不在の本人が命令して招集してきた2人の友達の男女は、お互い別に仲良しでもないのに一緒に年を越すっていう。。。でもそういうおかしな出来事がたくさんある内容だが、どれも自然な成り行きだし彼らも自然に受け止めて居て面白い。彼らがどういう人達かというと、仮に悪人がいればひとたまりもなく騙されそうな赤子の如く免疫のなさそうな人達。学校で真面目に勉強はしても「人間」という教科は0点みたいな人ばかりだ。一歩も進歩しないまま日々自分の感情だけを満たすために過ごす。相手が何を求めてるか全く理解せず風邪なのにコッテリしたみそ煮込みうどんを作るわ、好きな男の好みは自由で意志のある女、すみれさんを見れば一目瞭然なのに全くそういう事に気付かない。あ、最後にテルコはマモルと一緒に居るという目的を達したまま、「彼の気持ちを汲み」遠慮して消える、即ち多少は彼の気持ちがわかった=成長したのかもしれない。時間が経てば、恋なんて一時の気の迷いで、それは流行り風邪みたいなもので、酷いこと言えば、10年も経てば、顔や名前さえ忘れるかもしれない。こんなクズ男のことなんて尚更「黒歴史」として位置づけるかもね。しかし、ここまで身を捧げ尽くすタイプの人はきっとスクスクと、父母または養育者にとことん愛されて育ったんだろう。逆に子供の頃、愛が欠けてたり捻れていたら、大人になってから一種のリベンジでその愛を利用し人を騙したり、又は疑ったりするだろう。友達の葉子は父母の関係に怒りを抱えており、その結果男全般への反発心で、男を軽く扱う。彼女については一番理解出来たし、意志を持っているところも共感出来た。

成田凌のクズっぷり、過度に自虐な若葉、純粋過ぎる社会性のないメンヘラの岸井ゆきのの髪型や顔も演技も全部良かった。好きなシーンはテルコのラップ、時々出てくる小学生の自分との会話も、視線のやり取り、みんな良かった、超近距離ショットの象の皮膚も良かった。

これは若者の群像劇ですが、極端なことを言えば、90歳でもこういう人は居ます。「純粋」と「頑固」は表裏一体で理解しない、理解したくない人は永遠に他人や物事の真理を理解しようとはせず、自分の凝り固まった勘違いの記憶を頼りに生きているんじゃないかな。

純粋という名のどうにもならない頑固な人達を描き切った、見事な映画だ!
ルイまる子

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