いのしん

愛がなんだのいのしんのレビュー・感想・評価

愛がなんだ(2018年製作の映画)
3.5
友達の結婚式から始まった田中マモル(成田凌)と山田テルコ(岸井ゆきの)の恋愛は、テルコの気遣いすぎな性格が裏目に出て、ある日を境に疎遠になってしまう。久々にマモルに呼び出され浮かれたテルコが出会ったのは、マモルが恋した塚越すみれ(江口のりこ)というがさつな女性だった。帰り際、「山田さんのそういうところが苦手」とマモルに性格を否定されるも、その後3人はそれなりの頻度で会う関係性になっていく。仲原青(若葉竜也)を加えた4人でキャンプに行った時、仲原が好意を抱いているテルコの友達・坂本葉子(深川麻衣)に対してすみれは「葉子は仲原を振り回しているだけの女性だ」と非難する。それをきっかけに葉子に対する熱が冷めた仲原を見たテルコは、今まで葉子が仲原を雑に扱っていたことに憤りを感じる。友達との関係性が崩れかけている最中、マモルからも「今後会うのをやめよう」と言われるテルコ。マモルは、二人で会いたがらないすみれを釣るためにテルコを呼び出して利用していたのだという。それは最低だと葉子から電話で叱られたマモルは、自分はテルコに甘えていたのだと反省し、テルコとの別れを告げる。口では既に冷めているとマモルに対して強がるテルコも、マモルとの縁を切らないよう、今後の二人のために発展的なことを考えようと提案する。結末、マモル、テルコ、すみれと、マモルから紹介された神林(中島歩)の4人で食事をし、テルコは新しい出会いから関係を築いていくのだった。
理由はないけど尽くしたくなる、それが好きということなのだと表現したシーンは、マモルとテルコのベッドでの会話。「顔も普通、どちらかと言えば優しくもないし、仕事もできるわけじゃない、お金もあるわけじゃない。世の中の男性をかっこいいかかっこ悪いかに二分したら、間違いなくかっこ悪い部類に入るのに、山田さんはなぜそんな自分に丁寧にしてくれるのか」と問うマモルに対し、「それは好きだからだ」と答えるテルコ。好きになるところなんてないはずなのに。
好きになるのに理由なんていらない。好きなタイプの人を好きになるのではない。好きになった人の過去統計を取った結果、こういうタイプが好きなのだと分かるのだ。
そして、テルコと同様に片思いをする仲原が、年越しにテルコと二人でこたつで食事しながら話す「幸せになりたいっすね」という言葉は印象深い。「夜に一人で家でお酒とか飲んでて寂しくなる時ってある。そういう時、誰かを呼んでどうでもいい話をしたい。」すごく共感。友達少ないし、周りはみんな結婚していくし、学生時代はあんなに遊べて楽しかったのに、社会人の今は一人寂しく毎日を過ごしている。一緒に寄り添ってくれる恋人がいたら、これからの人生を共に歩んでくれるパートナーがいたらなぁと、世の中の独身の人たちは思わないだろうか。
登場人物は20代後半、自分はその入り口に立っている。そういう人たちの恋愛は告白から始まるのではなく、何となくの雰囲気で始まって何となくの雰囲気で終わってしまうのかなあ。自分が好きになった人は振り向いてくれずに、別の人に恋している、という切なさ。それでも諦めずにその人を思い続けてしまう。それが愛なのかもしれない。