みかんぼうや

愛がなんだのみかんぼうやのレビュー・感想・評価

愛がなんだ(2018年製作の映画)
4.0
ザ・恋愛に振り回される男女の恋は盲目映画。約2時間、徹底して岸井ゆきのと今泉力哉監督の作風を愛でる作品。いや、岸井ゆきのだけではない、この一方通行な恋に生きる人間臭い登場人物たちとそれを演じた各演者たちを愛でる映画。

正直なところ、映画としての“凄さ”を感じるわけでもないし、設定や展開自体はよくある内容で、どこかの恋愛バラエティーショーでありそうな話(「あいのり」とか「テラスハウス」とか?)。物語に特段の面白味がある作品ではないので、低評価が多いのもなんとなく納得。

しかし、私、やっぱり今泉力哉監督の作風がただただ大好きなのだ。絶対的“悪者”がいるわけではない。それぞれがそれぞれの価値観と生き方の中で、各自の恋愛観を持っているだけ。別に誰かが嫌がらせをしたいわけでもない。ただ、ちょっとした考え方のズレがあるだけ。しかし、そのちょっとしたズレが、致命的に埋められない恋愛における壁となる。こういう微妙で繊細な関係性を描くのが、今泉監督は本当に巧い。そして、彼特有の長回しが、その微妙な関係性をとても自然に表現している。

加えて、今泉監督作品のもう一つの魅力は、登場人物たちの“色づけ”。とにかく生臭い人間らしさによって、一人ひとりに“たとえ共感できなかったとしても、どこか惹かれてしまう魅力”がある。それは、今泉監督の演出が見事なのはもちろん、キャストのハマり具合と演技の素晴らしさによる部分も大きいのだろう。

「神は見返りを求める」で一気に虜になってしまった岸井ゆきのは、「神は・・・」に勝るとも劣らぬチャーミングさを本作でも見せつけ(人によってはちょっと面倒くさい女子なのかもしれない!?)、その演技力となんとも言えぬ表情の可愛らしさで、個人的に今一番気になる若手女優第一位。彼女が日本アカデミー賞を受賞した「ケイコ」も早く観たい。そして、元々若手~中堅俳優として好きだった成田凌と若葉竜也。本作でも安定の演技。若葉くんは、ちょいウザキャラもいいけれど、本作や「街の上で」のようなやや地味めの青年役のほうが個人的には好き。そして、江口のりこ。最近では「半沢直樹」での女性都知事役の印象が強かったけど、こんなおばギャル役でもしっかりハマる。この幅の広さ、凄い。

今泉作品はまだ4本しか観ていないが、間違いなく私の中で現代邦画のトップ5に入る好きな監督(あとは、西川美和監督、河瀬直美監、吉田恵輔監督・・・あたりでしょうか?)。まだまだ観ていない作品が多く、本作を観て、さらに今泉監督作品への期待が高まるばかりだ。
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