わんぱく長助

愛がなんだのわんぱく長助のレビュー・感想・評価

愛がなんだ(2018年製作の映画)
3.5
総評:日常版アウトレイジビヨンド〜全員悪人〜

テルコ、マモル、ヨウコ、スミレ、ナカハラという主要キャラ全員が、欲望にまみれた現世に跋扈するマジモンである。中でも、主人公のテルコはずば抜けている。序盤ではまだ辛うじて凡人の目をしていたのに、ナカハラやヨウコとのいざこざを乗り越えたあたりから顔がぼうっと浮いてきて、ラストは完全に狂人と化している。まったく、恐ろしい。

音楽の少ない作品だけに、喋りの間が苦手な人間が見るのは少し厳しい。しかしながら、その拘りが最高にマッチしたシーンがある。物語終盤、テルコとマモルのタイマンシーンだ。本作ツートップが繰り広げるジャブの差し合い…頭脳戦…瞳を凝らしても見えない血飛沫…このあたりが映画のピークと見て間違いない。

とどのつまり、我々はこんなイカれた人間共と遭遇するリスクを背負いながら、日々の暮らしを営んでいるのだと、改めて実感させられる作品であった。勿論、我々自身がこんな人間になる、或いは既になっている可能性も否めない。が、それは感情を持つ生き物としての宿命と考えればいい。そうやって割り切ることさえ出来れば、己の中に潜むテルコマインドが暴走しかけたとしても、決して動じることなく、息を吸って、吐いて、また直ぐと平穏な暮らしに戻れるものだと、私は考える。