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愛がなんだのakrutmのレビュー・感想・評価

愛がなんだ(2018年製作の映画)
3.4
結婚式で知り合った男性を好きになり、片想いながらも全力で彼のために尽くそうとする主人公のOLテルコを描いた角田光代の同名小説を原作とする、今泉力哉監督の恋愛映画。

片思いの相手マモル(成田凌)に執着する姿を描いた究極の片想い小説が原作だけあって、最初のほうは感情の起伏に乏しいポーカーフェイスのマモルとテルコを通じて、ある意味でホラーにまで昇華するような勢いで、スコーカー的キモさを醸し出すテルコ(岸井ゆきの)に、個人的には馴染めないまでも個性的な映画として評価できそうな感じがしたが、塚越すみれ(江口のりこ)が出現したことでマモルがテルコと同じ立場に立つようになった頃からは、ただの平凡な恋愛ドラマに成り下がってしまったように思う。葉子と仲原の顛末も素直すぎるし。

もちろん一見する限りでは、平凡な恋愛ドラマではない。例えば、最後のほうのテルコの決断はストーカー的行為の継続のためなのだが、そんな理性的な方法で対処しようとするテルコが平凡なのである。小説ではどうなのかはわからないが、テルコにはもっともっと突き抜けてほしかった。また、「どうしてだろう、私はいまだに田中マモルではない」というラスト付近のテルコの台詞は本作のエッセンスなのだが、これを台詞で済ますところが残念なのである。本当に人を好きになると相手と同化したいという、タイトルでも暗示されている心情を、映画ならではの映像で表現してほしかった。今泉力哉監督の作品は初鑑賞であるが、本作での感性は自分と合わないかもしれない。

なお、個人的に印象に残った俳優は、仲原を演じた若葉竜也。他の俳優よりも頭ひとつ出ている感じがする。江口のりこのキモさもなかなかだった。
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