青二歳

人生に乾杯!の青二歳のレビュー・感想・評価

人生に乾杯!(2007年製作の映画)
3.3
ハンガリーの老夫婦が年金じゃ暮らしていけん…とモタモタ紳士的強盗をするお話。じいちゃんスゴイねそのオンボロカー(ソ連車チャイカ)!重厚無骨なソ連製クラシックカーでカーチェイスが展開するとは思わなんだ…(´Д` )
日本の現況とはだいぶ違うことを留意した方が面白いかと。ハンガリーは年金制度の大改革(日本ならあり得ない感じの)があったんですね。共産政権時代から民主化する過程で色々あって、金融危機でもゴタゴタしてIMFのお世話にもなり。この老夫婦は…おじいちゃん党の運転手で30年お勤めしてたらしいから年金もそれなりにもらえそうですけど。それとも損を受けた層なのかな(日本と違って将来の受給世代でなく、今の受給世代に改革の痛手が出ちゃってる)、あるいはハンガリーの年金支給額はみんなヤバいのかしら。
ともあれお金がなくなってノタノタ銀行強盗からの逃避行ムービーに。

廃坑跡地の待ち合わせシーン…なるほど廃坑にソ連車…どうやらこれはある一定以上の年齢層のツボをつくアイテムなのね。ハンガリー史に詳しければもっと細かいアイテムを見つけられるんだろうか。例えばハンガリーにキューバからの移住者がいて、しかもその爺さんがラテ〜ンなお庭をこさえているなんて驚愕するばかり。共産圏のネットワークは東欧と遥かカリブ海を結んでいたんだなあと改めて。ソ連ならイメージつき易いですがハンガリーとキューバの取り合わせが絵面的に新鮮です。
…おそらくですが、これ共産政権時代を全力で懐かしむ映画なんでしょうね。細かいアイテムや新しい年金制度は、なお記憶に残る過去をくすぐるようです。そう観ないとちょっと置いて行かれる点がチラチラと見受けられます。ただそう考えれば夫婦の真の目的も余計に痛ましくなりますが。過去を想う懐古は、喪失からの回復へはつながらない。

興味深いことも多く老夫婦が喪失を埋めようとするドラマも悪くないんですが、一点…ハンガリーのメディアがポピュリズム全開で寒々しい気持ちに。年金制度に声を上げるのはいいけど対案ないのに持ち上げちゃうのは如何なものか。リスク覚悟で運用するか現役世代の負担大きくするかしかないのに…。それにIMFにもつっこまれたんだから簡単にゃ行くまい。概して映画に挿入されるメディアはポピュリズムでイヤだ。
ともあれ中々見応えありました。
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