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THE GUILTY/ギルティのRenのレビュー・感想・評価

THE GUILTY/ギルティ(2018年製作の映画)
3.5
まだまだ映画にはワンアイデアで作れる可能性があることを知らせてくれる作品。Netflixで配信が開始された瞬間に飛び付きました。歴史に残るのも当然で、ラジオドラマかというくらい音声が頼りの一作。

『フォーン・ブース』『[リミット]』『テロ、ライブ』『search/サーチ』とかと並べて語れるかと思う。ただこれらに比べて、圧倒的に視覚情報の削ぎ落とし方が潔い。よく映画(特に大衆娯楽映画)には「説明過多だ!」「もっと観客の感受性を信用しろ!」といった批判が付くことがあるが、今作はその「観客の想像力への信頼」をストレートにエンタメに昇華してしまった点で非常に優れている。

この映画を観るときの頭の働き方は小説を読むときのそれと同じで、受け手が脳内で映像を補填することで成り立つ。それは、人間の想像力のバイアスを逆手に取った所謂叙述トリックを仕掛けるのが容易になる....ということを意味する。
加えて今作の主人公は、「それは自業自得だろ」と言い放つなど他人に対してどこかドライな面がある一方で、仕事は完遂せねばという使命感や、毒を食らわば皿まで精神を持ち合わせた人物。故にどんどん余裕が無くなって視野が狭くなっていく。そんな彼の言動のせいでより我々が色眼鏡をかけされられる。

つまり、
○ 観客が脳内で映像を補填する構成
○ 完全なる主人公の追体験
のおかげで、作為的にトリックにかかりやすい環境を作っているのがこの映画の面白いポイント。
後半へ行くにつれ照明も暗くなっていき、本当の意味で視覚情報が少なくなっていくのも面白い。仲間を頼ればいいものを、部屋に閉じ籠り、真相に追い詰められていくアスガーの心境と映像がリンクしていく。

普段は肩掛けスピーカーを愛用しているが、今作はイヤホンで観賞した。スピーカーではなく、イヤホンやヘッドホンで、オペレーター気分を味わいながら観賞したい一作。



《⚠️以下、ネタバレ有り⚠️》










さすがにこの語り口ならイーベン犯人だろうと思っていたら来た。叙述の基本「信頼できない語り手」方式。これを映像で見せていたら、イーベンの挙動ですぐバレていたため脚本としてはこれで良かったのだと思う。
途中の、一気に緊張の糸がピンと張られる瞬間も良かった。主に「白いブラウスと手が血だらけだ」「お腹にヘビがいたの....」のところ。

ただ正直、さらにもう一捻り加えてくると思っていたらそのまま終わった拍子抜け感は否めずだった。ラスト20分くらいでイーベンが精神疾患であることが露呈してから、もう一つ山が欲しかった....!
アスガーの過去の罪と重ね合わせ、殺しが「故意だった」「故意でなかった」の対比を見せるのもいいが、そこからタイトルの「ギルティ」の意味への繋げ方もちょっとだけ分かりづらい気がした。
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