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THE GUILTY/ギルティのkuronoriのレビュー・感想・評価

THE GUILTY/ギルティ(2018年製作の映画)
4.0
フォロワーさんに教えてもらって、アマプラで鑑賞。
全編警察の緊急通報司令室内だけで進行するほぼ一人芝居の映画なので、こりゃ情報量の多い吹き替え版の方がいいかなと思い、そっちで観ました。

最初の方で感じたのは(おいおいデンマーク警察大丈夫かい?)ってこと(笑)。
これは、同じデンマーク警察を描いた「特捜部Q」の原作小説シリーズを暇ができるとチビチビと読んでるからです。こっちの警察も「なんか上手く行ってない感」が凄くて…(笑)。映画化されてますが観てません。後の楽しみにとってあります。
もともとスウェーデンの警察小説「マルティン・ベックシリーズ」が好きで、同じ北欧なら…と特捜部Qを読んでみたんですが、これが正反対!
「マルティン・ベック」は全10作で描かれる10年間に警察組織がどんどん軍隊化管理化されていき大事なものが失われていくという背景も描かれているのですが、「…Q」は逆になんだか警察組織が混乱しててみんな好き勝手やって誰も制御出来てない感満載なんです(笑)。
これ、スウェーデンとデンマークのお国柄の違いなんでしょうか???

閑話休題。
本作は緊急通報司令室のオペレーターが主人公で、終始カメラがそこから出ない仕様です。(ワンシチュエーションっていうんですか?)
どうも主人公は訴訟を抱えた刑事で、裁判で無罪になれば現場に復帰出来るという状態のようです。緊急電話を受けるオペレーターを嫌嫌やってる感じが伝わってきて、横柄で非常に嫌な感じです。
ここが問題なんで(笑)。主人公が不快でも普通の映画ならそれ以外の魅力で観客を引っ張っていく要素を用意出来るわけですよ。でもこれワンシチュエーションなので他には何もない。観客はこの不快な主人公を見つめてるしか無いわけです(笑)。
ここが観客の最初の壁になるのではないでしょうか?

ちょっと前に、カーク・ダグラス追悼で彼の出世作のひとつの「探偵物語」を観ていたのですが、これを思い出しました。「探偵物語」は誤訳の邦題で、内容は刑事物語です。こっちも小さな警察分署から殆ど出ずに話が始まって終わる、ワンシチュエーションと言ってもいい内容の映画です。
でもこっちは最初カーク・ダグラスは颯爽としてるんですよ。本作と逆ですね。なので観客は不快な思いをすることなく話に入っていける。そして、話の進行と共に彼の内面の問題点が顕になっていくわけですが、その頃には観客はがっちり話に取り込まれているわけです。なので問題はない(笑)。

本作は流石にクラシックの「探偵物語」よりも主人公の内面描写的に複雑になってます。話の結末もハッピーエンドなのかデッドエンドなのかなんとも言い難い余韻を伴うものになっております。
ぜひ、最初の壁を乗り越えて結末まで御覧になってください。

なんかハリウッドリメイク版もあるとか。そっちも観てみたい。
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