このレビューはネタバレを含みます
物語は全て同じ空間の中で過ぎていくのに、会話や物音だけで緊迫感ありまくり、手に汗握る展開だった。ほぼアスガーの表情や動作でしか画が変わらないのに、ここまで情景が浮かぶんだからすごい。
最初は音だけで「犯人はこのルートをこの道を通っている!つまり犯人はここだ!」みたいなアスガーが推理をしてストーリーを展開していくのかと思ったけど、全く違って。与えられた情報だけを見て、自分もしっかりステレオタイプなバイアスがかかっていることに気付く。徐々に全貌を察していくこの感じ、ゾワっとした。
こんなに1人であれこれ指示出したり電話して大丈夫なのか?とハラハラしてたんだけど、案の定悪い方向に進んでいるところもあって、そりゃそうだろ!とツッコんでしまった。
アスガーが何をしたのかは最後の最後で分かるんだけど、多分家庭もうまく行っていなかったであろう彼。警察官になるくらいだから正義漢で、本当にイーベンや家族を助けたいという思いはあったんだと思う。でもここで誰かを助けることで、自分の中だけでも抱えた罪を軽くしたい、自分の家庭と重ねて家庭を自分が壊してしまったことへの贖罪の気持ちもあったんじゃなかろうか。それゆえ、躍起になって暴走気味に捜査を進めようとしたのかなぁ…。
オリバーを殺してしまった母に語りかけるアスガーは、自分の犯した罪と向き合っていたんじゃないだろうか。
2024年42本目