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キューブリックに魅せられた男のpikaのレビュー・感想・評価

4.5
ビックリだよ!昨今声高に叫ばれ始めたパワハラ問題に抵触しすぎてもはや犯罪レベル!身の捧げっぷりが人智を超えすぎなんだけど、一人の男の生き様映画として意義深い映画になってる。
ヒース・レジャー似のイケメン俳優レオン・ヴィタリが「バリー・リンドン」の役を得たのをキッカケに、キューブリックに心酔し、役者を飛び越え映画製作そのものに惹かれていく。
役者として絶好調で、どんなことをしてでも入りたいと切望したシェイクスピアカンパニーからのオファーもかなぐり捨て、給料すら要らないからとキューブリックの元で裏方を始めるが、キューブリックのためならばとすべての要求をこなし、心身共に注いでいく日々は壮絶で、関係者から「映画業界は特殊で、15時間、時には18時間労働もあるが、レオンは24時間週7日でいつ寝ているのやら」と言葉を変え繰り返し語られるほどの献身を注ぐ。冒頭で「人生をかけられるものを見つけられる人間はなかなかいない。レオンはそれを見つけられた。」とか言われてたけど芸術家本人と献身する立場ってこうも違うものなのかと衝撃を受けた。キューブリックの名前は映画史に残っていて多くの人が知っているけど、レオンの名前はどこまで知られているのだろう。名誉のためではないとはいえ、凄まじい人生だなと。せめてこの働きに見合った報酬が、と見ていたら息子が援助してる期間もあったらしいし、給料に全く反映されていないのもつらい。
でもここまで全てを懸けられるものを見つけ、「これは全部俺がチェックした」「この全てに関わっている」と胸を張って断言できるほどやり遂げたものがあるというのは誰もが真似できることじゃないなと感動した。どこかで妥協したり諦めたり、不満や文句を言ったりと逃げたくなるようなところでも、プライドを持ち自らを鼓舞してやり遂げたことは事実で、名誉も金も残らずとも、他人にどうこう言われることよりも、信念を曲げなかったという、こういう生き方があるんだと知る喜びがあった。
こういうドキュメンタリーは本当に価値があると思う。名の残らないような、影として生きた人の懸けたものを残す映画。長く残って欲しいと思う。
映画どうこう以上に、こういう全てを懸けた生き様みたいなものに弱いので称賛の意でこの点数になっております。

レオンがシェイクスピア劇に出演したときの写真素材にベルイマンが写っていた。ベルイマン演出の舞台だったのかな。
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