haru

キューブリックに魅せられた男のharuのレビュー・感想・評価

4.5
神のためにすべてを捧げた男。

スタンリー・キューブリックに惚れ込み、好調だった俳優業を辞め、彼の手足として裏方で働きまくったレオン・ヴィターリ。彼は「何でも屋」で、俳優の演技指導からキャスティング、宣伝、効果音、交渉から、猫の世話まで何でもやっていたらしい。24時間365日倒れるまで、いや倒れても、彼はキューブリックのためにすべてを捧げた。
キューブリックの完璧主義は有名で、多くの人が抱いている「偏屈なヤバそうな人」というイメージは、たぶん当たっている。彼と仕事をした多くの人たち(レオン以外)は口を揃えて「レオンは本当にすごい。(私には無理だけどね!)」と言っていて、壮絶な現場だったことは想像に難くないし、きっと彼でなければできなかった。しかしレオンはキューブリックのことを決して悪く言わない。たまに出る暴君エピソードは、正直ブラック企業の理不尽パワハラ上司と、ボロボロになるまでこき使われた部下の話にしか聞こえないのだが、この上司と部下の「情熱」の行先は常に同じで、二人とも燃え尽きることはなかった。そしてキューブリックが亡くなった後も、レオンは情熱を持ち続け、最後まで仕事に打ち込んだそう。
これほど何かに没頭できるなんて、心から羨ましいです。彼の映画作りへの想いが伝わって涙が止まりませんでした。
haru

haru