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ローライフのAZのレビュー・感想・評価

ローライフ(2017年製作の映画)
3.5
タランティーノに大絶賛されてるだけあってタランティーノ感は強く、確かに『パルプフィクション』に似てる。ただ、メキシコテイストが入りまた違ったものになっていた。


今作のキャラクターと『パルプ・フィクション』のキャラクターを対比して並べてみる。
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悪党のテディ(死亡)=マーセルス(死亡)
キース(死亡)とランディ(改心)=ヴィンセント(死亡)とジュールス(改心)
モンストロ(レスラー)=ブッチ(ボクサー)
ケイリー(妻)=ファビアン(彼女)
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クリスタルのポジションだけいないが、キャラクターがかなり似ている。モンストロとブッチなんか、父親に対して強い思いを抱えている姿がかなり酷似している。だが、見終えたあと余韻だったり改めて考えてみると気付く程度で、全体的な雰囲気は独自のものがあった。

メキシコとの国境に近いという事で、治安が悪い環境。不法移民や麻薬中毒者、売春や臓器売買が行われている地域での出来事を、暗い雰囲気に描くのではなくポップにカジュアルに描いている。特にこの映画をそのようなものに見せているキャラクターがモンストロとランディ。彼らだけ、自分の世界観を持っている為、別の視点を与えてくれる。

モンストロの場合は“モンストロ”という存在がどうあるべきか悩んでいる。腕力はだれよりもあるのだが、自問自答したり、時には父親に救いを乞う姿など強さと弱さが見える愛せるキャラクター。独り言をぶつぶつと喋っているの姿、その立ち振る舞いなども面白い。

ランディは親友のキースに誘われ、この出来事に巻き込まれていく。その行動や思考は少しアホで情けないのだが、最後は皆を助ける姿が逞しく、こちらも愛せるキャラクター。結局“モンストロ”の意志を継ぐのは彼というのは、個人的にしっくりきた。

今作は、冒頭やラストシーンにグロい描写はあったものの、全体的に暴力的な表現はあまり見せないように作られている。例えばモンストロが怒りを爆発させたと思ったら、次のシーンではすでに事が終わっている。ランディもボコボコにされるシーンはあるものの、車内からの視点なので直接的な暴力シーンは見えないようになっている。このあえて見せない演出が個人的には好きで、映画に独特のポップさを与えている。


それぞれ悩みや企みを持っているのだが、最終的にそれが一つに繋がっていき、新しい考えに至る姿は哲学的で気持ちが良い。まさに新しい『パルプ・フィクション』。ちなみに『パルプ・フィクション』の意味は安っぽい小説。中身がないっちゃないのだが、その連鎖がシナジーを起こし、何かが生まれる瞬間を映し出したような作品だった。

テディが車でモーテルに向かう姿を後ろから捉えているシーンがあるのだが、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』でも象徴的に使われている。引用したのかな?


○良い面
・独特の雰囲気、テンポが魅力。
・キャラクターが全員個性的。
・さまざまなストーリーが混じり合っていく様子が心地よい。
○悪い面
・関係性や行動が分かりにくい部分がある。
・全体的に盛り上がりに欠ける。
・モンストロのポジションや強さがよくわからなかった。
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