MikiMickle

ローライフのMikiMickleのレビュー・感想・評価

ローライフ(2017年製作の映画)
3.3
無名の監督ライアン・プロウズが映画学校の仲間たちと、それぞれが書いた脚本を混ぜ合わせて練り上げて作り上げた作品。

メキシコ国境近くのカリフォルニアが舞台。
不法移民・人身売買・臓器売買・売 春・麻薬などが染み付いてしまった貧困地帯。
そこで繰り広げられるバラバラな話が、それぞれの時系列を経て徐々に絡み合っていく。

「怪物」
ルチャリブレでヒーローであった覆面レスラーを父に持つモンストロは、父への異常な憧れとコンプレックスを抱え、父と同じ名前・同じ覆面を被る“自称ヒーロー”。だが、切れたら見境がつかなくなる故にレスラー生命を絶たれ、犯罪の片棒を担ぐ今の現状に苦悩する。全ての望みは産まれてくる我が息子に父のレガシーを継がせる事。
彼の妻ケイティは不遇で悲惨で壮絶な境遇を過去に持つドラッグ中毒妊婦。

「悪魔」
モーテルの管理人をしているクリスタルは、過去の深い悲しみと後悔を抱え、余命わずかなアル中夫ダンの臓器提供者を探している。彼女が提供者に選んだのは……

「ならず者」
11年ぶりに出所した友達思いの男ランディは、顔に鉤十字のタトゥーを彫られた博愛主義者。彼に罪をきせた親友である黒人会計士キースは、ランディを利用しようと目論む。

「無法者」
表向きはタコス屋を営みながらも、様々な犯罪とその斡旋を行う極悪人テディ。

この4つのエピソードが絡み合い繋がっていく様は、見ていて楽しい。
タランティーノが絶賛したっていう事がよくわかる。いかにもタラが好きそう‼ 『パルプ・フィクション』と構造が似てるが、そこには深い闇が混じっている。
闇を抉りながらも、重くはなく、ユーモアもあり、スピーディーで、そして切ない。
かつ、グロさもプラスされている。しかし、グロ=ホラーではない。グロさを見せるタイミングとその意味がしっかりとあり、そこには様々な感情が刻まれている。苦悩や怒りや哀しみや…… そういうものが丁寧にグロによって表現されていた。(グロ好きとしてもナイス頭潰しには満足w)

そして、“ローライフ”底辺に生きる人々への愛が感じられる。登場人物は誰も彼もどうしようもないのだけれど、クズなんだけれども、だからこそ、ラストは思わず涙が込み上げた。

罪と葛藤と信念と愛。
掃き溜めのクズの中に存在する正義とヒーロー。
上っ面ではない、愛おしい変わり種映画。
MikiMickle

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