人類ほかほか計画

闇動画9の人類ほかほか計画のレビュー・感想・評価

闇動画9(2014年製作の映画)
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フェイクドキュメンタリー系心霊ホラー映像の中で、『ほんとにあった呪いのビデオ』シリーズに多く見られるような、「何気ないホームビデオだけど後からよく見たら霊とかが映ってました」っていう系統のものは、怖がる(怖がらせられる)主体が映像内におらず、要するに「視聴者自身が怖がる人やってくださいね」というようなことなのだけど、それって個人的にあんまりピンとこず、いやピンとくるこない怖い怖くないおいといて、通常の劇映画としてのホラー表現とは全く別物としか自分は捉えられないのだけど、『闇動画』シリーズは怖がる主体がいる系の構造のものばかりで、そっちはまあ通常のホラー映画の表現と比べたり出来不出来を判断したりが可能なものというかまあ普通の劇映画と基本的には変わらないものとして見れると思う、でインターネットのこういうののファンの人が書いたおすすめ作品の記事とかを読みながら傑作とされてるものをちょいちょい見た中で、それでも「そんながっつり霊が映り散らかしてたらそれはもう歴史的事件やないかい」みたいな、怖いなー怖いなーで終われないレベルに霊の存在が証明されてしまっててもうそんなん一種のシンギュラリティやないかい、SFやないかい、みたいな、そういう意味でリアリティがないゆえに怖さが減じてるものとか(その場合それを怖いと感じるための拠り所は、「霊なのか霊じゃないのか」「映ってると言えるのか言えないのか」的な本来の心霊映像的恐怖よりも「この映像は作り物かガチか」というところだけになってしまい、その場合「ガチだと歴史的大スクープ映像だけどまあそうは思えない、霊の存在証拠にはなり得ない、作り物と見なされる映像だからこういったオカルトビデオとして流通してるんだろうけど、でも確実に作り物だとも決して言い切れない」的な超微妙な塩梅を突かないと怖さにはならないはずだけど、まあそういう絶妙なポイントをうまく突けてはいない作りだよなー、みたいな……、例えば『闇動画12』「いすのおじさん」なら、椅子が何度も現れるのももっと「気のせいかな」って思えるような微妙な映り方にしたほうが怖いし、あっちに逃げてもこっちに逃げても先回りして何者かが待ち構えてるというところも何度もやりすぎで、そういうのはやっても2回が限界だろー、みたいな、そういった判断センスの部分……)、あんまりやっぱり自分にはピンとこないものが多い中で、比較的これは良いと思えた、面白いと思えたのがこの『闇動画9』の「告白」と「振り込め詐欺」だった。
「告白」のほうは普通のカメラには映ってないけど暗視カメラのほうにだけ映ってるという二段構えの段取りでリアリティを獲得できてて、映り込み方も固定カメラである利点が生きててかなりいい感じに構図が外れててそこもいい塩梅。2台のカメラの距離感も面白い。「その後全員死んだ」って話にしてるのはやりすぎで大事件すぎでリアリティ削いでていただけないが……(一人は発狂入院、一人は部屋に引きこもって会えない、一人は行方不明、くらいにしてほしかった)(『闇動画3』「夜の峠道」も二段構え映像だったけど結局メインカメラのほうにあまりにがっつり映ってるというやつなので説得力作りにあんまり貢献できない感じだった)。
「振り込め詐欺」のほうは詐欺グループの人たちが逆に酷い目に遭うっていう因果応報感も倫理的にイイハナシで最高(罪だから罰なのだって感じ理屈のある教訓話ではなく、因果応報かつ不条理ってのがここでは大事)だし、怪異が幽霊とかではなく「人を誘い込み溶かし殺す怪物」っていうテロップが、笑えたけど初期鬼太郎の妖怪(おどろおどろ等)やアメリカンホラーのようなテイストで面白いしそれが現代の普通の古びた民家にっていうのがわりと新鮮だしビジュアルも良かった。