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ユーロクライム! 70年代イタリア犯罪アクション映画の世界のとぽとぽのレビュー・感想・評価

3.5
カオス無法地帯!今ではできなさそうな熱に浮かされた馬鹿騒ぎが、後年から見ると物珍しく見えてムーブメントになるという現象を、映画キッズ/ファンの心をくすぐるように

面白おかしく興味深く見られた。本編再生してまず驚いたのが、本作の安っぽさ!けど、そのホームビデオに毛の生えた自主映画みたいなクオリティーが本作にはよく合っていたと思う。出演する当時のスター達俳優陣は豪華な顔ぶれ(なんだろうきっと…)。メルリ、覚えた!
【ポリチェスキ】警察とギャングの映画。すぐ真似するイタリア人の気質。刑事ものブーム!怒りを叫ぶアメリカの警察映画、その頃イタリアではウエスタン量産、当たればカネのために死ぬほど作るのがイタリア映画。それに飽きれば次に行く。風合いをパクり独自に味付けする。擦れるだけ擦り倒して搾り取れるだけ取ってパクりまくる国民性。それまでは剣闘士、スパイ、ジャーロ。他にも戦争、海賊、カンフーなど。
vs 世界。犯罪者(←→組織)にも体制にもうんざりした主人公が孤立した中でひとり戦うような作品に観客は燃えた。アメリカのスター達は節税もあってハリウッドからイタリアへ。にしても、3度ジョン・ウェインと共演したことから右翼的すぎてハリウッドから追放って。
撮り方はとにかく早撮り。同録なし!ゲリラ撮影!タイアップに合作!スタントは役者本人!男らしさの証明にもなっていた、という男尊女卑・絶対的男性優位社会におけるマッチョイズムあふれる"男らしさ"。"アクション映画に出るならアクションをすべきだ"、ジャッキーチェンも大ファンなジャン・ポール・ベルモンドのように。実弾を込めると早撮りできる。カースタントはユーロクライムの得意技!! 働き詰め監督たち、中でも叫びまくっていたのがウンベルト・レンツィ。こういう撮り方やコンセプトみたいな共通する精神性を以前にどこか何かで見た気がする。
斬新でやりすぎな暴力。児童虐殺!放尿拷問!性器暴行!女装ファイト!マフィアの定義って?人それぞれで曖昧だけど、例えばカモッラ。映画スターになりたいギャングたち。女性を何ブロックも引きずっていたシッポ=引ったくりに、一番多かったのが誘拐。赤い旅団にネオファシスト。現実とシンクロする映画という虚構、その双方が実社会にも影響を与える。
女性に厳しい70年代のイタリア映画。同時代的というよりは力があった頃の日本映画のほうが早いかもしれないけど、菅原文太作品など見ていて不快な描写も多いインモラルな内容にも通ずる部分が大いにあった。いや、むしろ描写的にはこちらイタリアのほうがキツイのだけど。時代のせいにして片付けてはいけないけど、やっぱり時代によるところは大きいだろう。けど当時は皆こんなの気にも留めないで娯楽として見ていたのか?
タランティーノ系な人達にだろうか、受けているらしく再評価の機運も高まり"伝説"になっているらしいジャンル(本当に?)。最後は同窓会みたいに皆が「イタリア(あの頃)に戻りたい…!」と口々、異口同音に懐かしんで終わる。

このサイクルは繰り返される
社会の変化の影響が大きい
"I never had enough time."
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