ひのらんげ

ロケットマンのひのらんげのレビュー・感想・評価

ロケットマン(2019年製作の映画)
3.5
"Candle In The Wind"
エルトン。それはあなたそのものですよね。

その昔、映画「エンジェル 僕の歌は君の歌」(1992年日本)を、友達からか、レンタルビデオ屋さんからか忘れましたが、VHSテープを借りてきて観て、何度も見て、いったん返却して、また借りてきて何回も観た記憶がある。(残念ながら今観ることは簡単には叶わなそう)
Your Song(僕の歌は君の歌)がまるまま一曲流れるオープニング。テロップで歌詞がついていた。
これほどオープニングで心を持っていかれた作品は稀です。思春期だった私にはぐっさり刺さりました。

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その後エルトンに嵌った私はたしかベスト盤のCDを買って擦り切れるほど聞いていました。有名な曲はたいていソラで歌えるようになっていました。

特にYour song(僕の歌は君の歌)は今でも。

この歌を聴きながら夜な夜な車で山道を走り、海に出かけ、そして寝ないで翌日出勤していた日々を思い出します。懐かしい。甘酸っぱいぜ。

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2007年の日本武道館のライブ(An Evening with Elton John Solo)で初めて、ステージに置かれたたった1台のピアノの前で、ひとり弾きひとり歌う姿を目の当たりにして感激したことは昨日のことのように覚えています。(確か1曲目Your songだった)

クロコダイル・ロックのスキャット、ロケットマンの優しいメロディーラインに度肝を抜かれ、ダニエルを聞いては心配し、グッバイ・イエロー・ブリック・ロードでは、どうしてそんなことを言うのかと私は当時混乱していた。(今は多少わかります)

でも、エルトンにここまで過酷な過去があったとは知らなかった。ここまで追い詰められていたとは。

この映画に、私がかつて何度も聴いた楽曲が生まれた瞬間をいくつも見て、作る側と消費する側の近くて遠い距離、説明されないお互いの事情。「理解」という概念すら太刀打ちできないように思った。何かを生み出すのは尊いことだ。再認識。

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今でも、いつでもすぐに、私の中でエルトンは奏(な)り始める。
この映画の素敵な劇伴と裏腹に過酷な人生を垣間見て私の記憶が更新される。
悲しくてきらびやか、そして寛容な寂しさの意味に気づかされる。
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