オム

ロケットマンのオムのネタバレレビュー・内容・結末

ロケットマン(2019年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

苦しかった。鑑賞前はド派手な衣装でドーン!薬ドーン!性関係ドーン!みたいな感じなのかな、と、思っていた…エルトンジョン自身が波乱万丈なのは知っていたけど、どちらかといえば色々な依存症を断ち切って25年らしいからド派手で陽のイメージが近年では強かったしね。

冒頭から苦しかった。ミュージカル形式でエルトンジョンの内側を掘り下げるんだけど、本人が制作に関わっているだけあって何気ないひとつひとつのエピソードがリアル。ああ、これだけは言われたくなかった、とか、こんなの言われたら終わりだってことが悉く起こる。その度に、一緒に傷ついてしまってすごくしんどかった…
セリフで語る以上に本人の心情が伝わってきて涙が出るほどだったし、タロンの歌唱力(表現力)とあいまってミュージカル形式が活きていた。

そこまで肩入れして観てしまったのは、タロンくんの演技がずば抜けていたから。特に、何かをグッと我慢するの時の傷ついた目、そしてそこから全てを覆い隠すかのようにニッと笑う口元。傷ついた目とのアンバランスさが忘れられない。歌もすごい。吹き替えなしとは恐れ入った…タロンくんはすごい。全編通してスタオベ。

何が辛いって、エルトンジョンの最も欲しかった愛は永遠に失われていることが辛かった。父親、母親からはもう今更愛されないし、仮に愛されてもあの時、ハグされたかった『僕』には真には届かない。愛した人、そばにいて欲しかった彼には『兄弟愛』しかもらえない。特にしんどかったのは、親友の最大限の親愛を表す愛情が、その先を求めたエルトンジョンの気持ちとは永遠にすれ違っているところ。誰も悪くないし、お互いちゃんとそこは飲み込んでるけど、それが本当に辛かった。幸い、今はもう25年も親友以外の伴侶愛と一緒で、お子さんもいます!っていう笑顔のエルトンジョンが最後に映るから救われるけど、もう本当辛い。

辛い。
ぼろぼろのエルトンジョンがド派手な衣装とサングラスと異常なほどの笑顔と陽気な振る舞いでピエロのようになりながらも、それでも隠れない才能に押されながら舞台で踊り続ける様。少年時代の影響か愛してくれと言いたい言葉が全て怒りか狂気か逃げに変わりわかっているのにごめんも言えない様。縋り付いた手の先には裏切りが待っていたこと。存在しない愛を求め続ける様。途中から、エルトンジョンと一緒に嗚咽するかと思うほど傷ついてしまった。健康な精神状態で望むべき映画笑

それほどまでにしっかり描かれ俳優たちの演技に引き込まれるミュージカルだった。
オム

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