このレビューはネタバレを含みます
今まで観た北野映画の中だと、一番純粋に北野武を感じた。笑いとシリアスのバランスが良かった。
沖縄のスナックでたけしと舎弟がヤクザをボコるシーン、花束に入れたマシンガンでヤクザをぶっ放すシーン、最初と最後の、柳憂怜の暗闇からヌッと出る無気力で生気のない顔、等々印象的なショットやシーンが多かった。
バットを振れず、銃を撃てない(弾が出ない)雅樹。ヤクザに突っ掛かり、尻拭いはマスターにしてもらう。挙げ句の果てに、恋人とタンクローリーでヤクザの事務所に突っ込む。暴力の振れ幅が過剰なほど大きい。でも最後のタンクローリーからは(あるいは全部)妄想かもしれない。鬱積したものを発散できない、青春の暴力的衝動を感じる。
たけしが演じていたヤクザ、死にたがっているように見えるが、生への未練もあるように見える。その葛藤が恋人への暴力に現れている。恋人への暴力は、みっともなさ過ぎる甘えかもしれない。それに、自分で死ぬ気はないから、誰かに殺して欲しかったんじゃないかと何となく感じる。
雅樹みたいなやつにあんな可愛い子を引っ掛けられるとは思えない。全部妄想だとしたら、それはそれで凄まじい狂気。