ヨッシー

キングダムのヨッシーのレビュー・感想・評価

キングダム(2019年製作の映画)
3.0
『これがヒットしても日本映画にとってプラスになるのか?』

『週刊ヤングジャンプ』で連載中の人気漫画を実写映画化。

中国の春秋戦国時代舞台に、奴隷の少年・信が『天下の大将軍』を目指し戦果に身を投じていく姿を描く。

監督は『GANTZ』『アイアムアヒーロー』『BLEACH』などの佐藤信介。
出演は山崎賢人、吉沢亮、橋本環奈など。

個人的に今月の裏の注目作品。
監督の佐藤信介はこれまで数多くの漫画を実写化してきたが、そのほとんどが(少なくとも内容的には)無残な結果に終わっている。特に去年の『BLEACH』は僕自身の原作への思い入れが強かっただけに本当に許せない出来。
そんな佐藤信介監督がまた実写化でアクション映画を撮ると言うのだから全く期待はしていなかった。

ちなみに原作の『キングダム』はほとんど読んでおらず、試し読みで3話目まで読んだ程度。
NHK放送されたアニメ版は今回の実写化の範囲である王位奪還編(?)までは鑑賞済み。正直このアニメ版もかなり残念な出来だと思うがここでは割愛。

最初に結論から言うと、思ってたほど酷くはなかった。原作へに思い入れの違いはあるが、『BLEACH』と比べ飛び抜けて酷いところはないし、それなりにいいところはある。

まず、かなりお金をかけているからか、セットや衣装、道具のクオリティは高い。春秋戦国時代の中国の再現度は邦画としてはかなりのレベル。スケール感もよく出てるし、中国人を日本人に演じさせてはいるけど、同じアジア系だからそこまで無理はなく、衣装もコスプレになりすぎない程よいバランスだった(一部を除き)。
こういった美術面の作り込みに関しては佐藤信介監督はある程度信頼できる監督だと思う。

俳優陣は一部を除きかなりよかった。
漂と政の二役を演じた吉沢亮はちゃんと2つの役の演じ分けが出来ているし、政の凛とした存在感、カリスマ性をしっかりと出していた。
他に良かったのは長澤まさみ。
山の民の女王らしい存在感はもちろん、あの衣装でコスプレに感じないのはすごい。長澤まさみならワンダーウーマンを演じられるんじゃないかと思うぐらい(笑)。

他の役者陣も概ね文句なしだったのだが、肝心の主演山崎賢人がやっぱりダメ🙅‍♀️
とにかく叫びまくりでウザい。
確かに信というキャラクターは原作でもバカで粗雑でうるさいキャラクターではあるんだけど、これを実施で見ると山崎賢人の演技の微妙さも相まって、野生児的なキャラというよりはイキってるイタい兄ちゃんにしか見えない。他の役者陣が上手いこともあって山崎賢人1人だけが浮いて見える。
正直デカイ声を出しておけばいい演技と勘違いしてるんじゃないの?と思ってしまうレベル。『進撃の巨人』の三浦春馬や『DEATH NOTE』の東出昌大並....とまでは言わないがかなりキツイ。
山崎賢人は『羊と鋼の森』でちゃんとした演技力を見せてるから大根役者ってわけではないんだと思うんだけど、今回初タッグだった佐藤信介とは相性が悪かったみたい。思えば『BLEACH』の福士蒼汰も似たような感じだった気がする。

あと、これはしょうがないかなとは思うけど、大沢たかおが演じた王騎もちょっとキツい。原作通りではあるけど、あのキャラを実写で見るのは若干気持ち悪い。大沢たかおが悪いわけではないけど。

ストーリーに関しては原作における1巻から5巻までと比較的範囲は狭く、原作者本人が脚本に関わってることもあってかかなり原作に忠実。無理なエピソードの省略や改編はほとんどなく下手くそなダイジェスト感はない。
佐藤信介監督作の中では比較的まともな脚本だと思う。
ただ、これは原作者がしっかり関わってるからで、もし佐藤信介に任せていたらどうなったか分からないと思う。

アクションはやはり佐藤信介といった感じで相変わらず監督の悪い癖や邦画の悪い癖が目立つ。
確かに動きは早くてすごい動きをするからぱっと見は派手でいいけど、とりあえず早く動かしてるだけで動きの一つ一つにあまり意味がない。不自然な吹っ飛びや回転が多くワイヤーアクションなのがバレバレで非常に偽物っぽい。

また、終盤は敵味方が入り乱れる乱戦なのに、戦況、各勢力の位置関係や目的が分かりづらく、ただなんかすごい(ように見えるだけの)アクションをしているだけでストーリーが止まってしまうのは相変わらず。
正直王宮攻略の作戦も本来なら不可能に近い戦いに勝つ説得力があるほどの作戦に見えない。
ぶっちゃけ今回も佐藤信介がやりたかったのはまたしても実写版『るろうに剣心』風高速剣戟アクションであって、あまり『キングダム』ならではのアクションを追求したようには見えない。これじゃあ『BLEACH』の時から何一つ進歩してないように感じる。

一応(一部を除き)役者陣はかなり頑張ってるし、お金がかかってるだけあって邦画らしい絵的なショボさはほとんど感じない。脚本もたぶん原作者のおかげでまともなものにはなっている。
でも、肝心の監督や主演がなんか他に人たちの足を引っ張ってるように感じる。
正直佐藤信介の成長は感じられるず、山崎賢人もどちらかといえばダメな方の山崎賢人が出ちゃってる。

そもそも、今回の企画自体が「山崎賢人で漫画の実写化をやる」というところから始まってるというのもどうかと思うし、この作品がヒットしたからといって日本映画界にプラスになるかはかなり疑問。
今回のヒットに慢心せず、むしろ今回の反省を生かしてより良い続編を目指すならいいけど、どっちかというと「有名漫画の実写化はまだまだ稼げる」「山崎賢人や吉沢亮なら人を呼べる」「佐藤信介監督なら実写化いける」みたいに勘違いしてまた似たような作品を量産しないか心配。最近はマジで何を実写化するか分かったもんじゃない。このままだとマジで『NARUTO』を実写化とか言いかねないもん。マジでやめてくれ🥺

一応それなりにヒットするのも納得できるし、見る価値はある作品だとは思う。大っ嫌いな作品ばかりの佐藤信介監督作の中ではかなりまともな方だとは思うので、一応オススメ....かな?
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