蛇々舞

キングダムの蛇々舞のレビュー・感想・評価

キングダム(2019年製作の映画)
3.4
さすが佐藤信介監督。
撮り方が上手く、どのシーンも絵になって美しい。

特に俳優の“ここぞ”という所作、それを舐め上げるように捉えるカメラワークが、登場人物をさらに魅力的に描き出しているように思える。

映像の美しさは言わずもがなで、中国の雄大な大地が、それをさらに高いレベルに押し上げているし、CGの使い方も効果的で、大画面で観ても破綻のない高級感を感じることが出来た。

脚本も一本の映画として見事に纏まっていると共に、壮大な叙事詩のプロローグとして期待が持てる。
少なくとも流れが停滞し、飽きてしまうようなことは無かった。

俳優陣も、それぞれに魅力的である。
特に皆さんが口を揃える吉沢亮は秀逸で、王としてのカリスマと、奴隷少年の無垢な笑顔とを見事に一人二役で表現している。
なにより佇まい、凛とした表情、力強い眼差し、芯のある語り口の美しいこと……彼をスクリーンに仰げるというだけで、この映画を観る価値があるとさえ思う。

大沢たかおの大変身ぶりも凄まじい。
ぶっちゃけ登場時間ってトータルで数分レベルで台詞も極少なのだけど、存在感がハンパなくて、強烈に印象に残る。
映画中盤の2度目の登場以降、次はいつスクリーンに現れるのかとドキドキワクワクしていた。

一方、主演の山崎賢人はイマイチ。
基本的に芝居の仕方が、ただ感情を爆発させるのみ。
ブルブル震え、涙を流し、青筋を立てて怒鳴る、がなり立てる。
まぁ演じ方が若いので少年らしさは出てるっちゃ出てるのだけど、正直、数々の台詞は聞き苦しいだけ。
演出が悪いのか?
でも彼の芝居って、いつも、そんなんだしなぁ……

ところで、前述した通り、かなり壮大なスケールで展開する、この映画。
その分、最終決戦のショボさが、とんでもないことになっている(笑)

たぶん、やはり予算が無いのだろう。
オープンセットを組んで大勢のエキストラを動員し、何台もカメラを回す余裕が無い(それを実現できるだけ俳優を拘束するための人件費が無い)。
それを補うため、やたら狭い空間に兵士らを押し込め、不自然なほど動きの無い格闘が行われる。
要するに、あまり人を集めずともよく、多くの場所を映す必要がなく、かつ殺陣の指導が短時間で済む、省エネ演出を慣行しているのだ……主人公に至っては、仲間と敵方が見守るなか、敵の将軍とダラダラ一騎打ち!

まぁ、合理的帰結ではあるんだけども。
そのせいで、敵は弓矢隊で囲んでるくせにゼンゼン撃たないわ、敵に囲まれながら隙だらけの大振りするわ、かなり「なんでやねん」感が満載である。

やっぱ金って偉大ですね。
だから大規模ロケしてビジュアルは取り繕えても、大規模な合戦シーンが撮れないんだなぁ……

ぶっちゃけ大河ドラマレベルの戦闘シーンでした。

そんなこんなで、邦画らしい残念さも、やっぱり健在な本作。

続編あるなら、予算増やして、たっぷり準備期間を設けてスゲー合戦シーンを撮ってほしい。

そんな感じで、トータル普通。
思ったより楽しめました!
蛇々舞

蛇々舞