イホウジン

キングダムのイホウジンのレビュー・感想・評価

キングダム(2019年製作の映画)
3.3
子供の「戦争ごっこ」

大衆向けの邦画にしては話の筋が通っている。登場人物個々人の心情もそれなりに把握できたし、それが一応ストーリーにも絡められていた。映像的にも、ワイヤーアクションがうるさい気もするが、舞台の作り方とか光の当て方とか、真面目に作られていたようには受け取れた。

しかし、映画の世界観自体はしっかりと再検討される必要があるだろう。
フィクションの部分が大きい以上「歴史映画」ではないとするならば、今作はその次の階層である「戦争映画」として観ることになるが、そもそも今作は果たして「戦争映画」たり得るのだろうか。「戦争映画」としての展開が用意されている(仇討ち,敵の敵は味方的な発想,大軍に策で攻める,など)割には、妙にスケールがしょぼい。内戦とも言えないただの兄弟喧嘩だ。そのミクロな闘いに戦争のメタ的要素を投入しているならいいが、それもない。敵側もあれだけの軍や幹部を揃えて、味方もあれだけの危険を冒して、それに見合った闘いが一切成されなかった。8万の軍勢どこいった??
この見方に対して「いや今作は隣人愛がテーマの映画だ」という反論があるかもしれないが、そちらの方面の突っ込みも不十分である。主人公の擬似兄弟と王子の義理の兄弟の対比関係が話の軸であることは察せたが、一方は映画のテーマに置くにしては序盤ですべてが説明され尽くしてしまう、他方は2人の比較を意識しすぎるあまり兄弟の描写にしては亀裂が入りすぎてしまった、という不完全燃焼に陥っていたように取れた。
ストーリーそれ自体も、まるでRPGゲームの粗筋を追っているかのようだ。子どもの頃の契りが大人になっても生き続け、水と油なコンビが生まれ、いかにもな中ボスが現れて、因縁の敵と共闘し、ラスボスを倒す。お決まりの展開は観ていて楽なものだが、深みには入れない。
今作の大沢たかおの評判がやたらといいが、別にジェットストリームのナレーションのトーンと大差なかったのでは?

他にも少々ツッコミしたい点があるが、そこまで書くとただの非難になりそうなので、ここら辺で堪えておくことにする。

とか言いつつ続編は少し気になる()
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