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不都合な自由のとぽとぽのレビュー・感想・評価

不都合な自由(2017年製作の映画)
3.5
「もう十分大人だ」理解と和解には時間が要るーーーー20年刑務所にいて38歳仮出所した主人公が通じ合ったのは、刑務所にいた時に支えてくれて恋い焦がれた先生の娘。「彼には味方が一人もいない」ーーーー気まずくて居心地悪くて、冷たくも温かな鋭い観察は不完全さへの賛同と優しい眼差し。神経に障る浮いたような感覚を見事に捉えている。20年も経てば町も技術も、そして人も変わる。けど自転車とか変わらないものも。久しぶりの自由は周りが煽てるほど自由じゃない、少なくとも自分にとってはそうは感じられない。それを誤魔化すような知的なユーモアが場を和ませながら、時に逆に寂しさを際立たせるようでもある。彼は悪くない、居合わせた場所が悪かっただけ。なのに皆見かけ倒しの薄ぺらな親切心を押し付けて、刑務所にいたって事実等だけで判断する。誰も何も見ていないし知ろうとしない、自分のようなクズのことなんか。時が解決するって言うけど時じゃ解決しないこともあって理屈じゃない。また、受刑者サポートの仕事をしている先生の家庭、夫婦関係が冷え込んでいて最悪だというのも頷けるし、語弊を恐れずに言うなら映画として面白い。それが不思議な依存関係へと。自分を隠す、偽る、皆を騙して一時楽しむ。やたらと人より水溜まりや窓といった場所とかその環境に寄るようなカメラが映し出す普段見落としがちな何気ない美しさと違和感と優しく不器用な音楽。その中で娘はアート、言葉にできない鬱屈した気持ちを表現することに時間をかけていて、まるでアートテープテロリストとでも言うべき小粋さ。『ユー・キャン・カウント・オン・ミー』『マンチェスター・バイ・ザ・シー』や『スリー・ビルボード』にも言えることだけど、作り手の明確な意思としっかりと作り込まれたキャラクターがいれば何もないような田舎町でもこれだけ話を転がし膨らませメッセージを伝えられる。ヒルディ役の女の子って『ショートターム』の子?傷を負った人々の歳月を経ての再生(と贖罪?)の物語・インディ映画という点では、同じデュプラス兄弟のもう一人マーク・デュプラスが主演した『ブルージェイ』とも共通点があるかもしれない。
HOME OF THE TIGERS CLASS OF 2001
「悪くないよ、実は結構気に入ってる」
「俺は吐く場所にこだわる。今日も吐くぞ。悪いな」
「正直凄く辛いんだ。想像以上だ」一日だけ一緒にいよう、俺に一日だけ時間をくれ
「どうした?」「分からない。帰るね。ごめん」
「今の私たちの生活は最悪の状況よ」
「俺が求めてるのはシンプルな人生だ」俺はあなたをこの上なく愛してるんだ
「俺は兄さんのドライバーだ。残りの人生一生任せろ」
「よかったらたまにはランチしない?これからの私たちを知っていくの」

P.S.同日見た『オンリー・ザ・ブレイブ』と同じGRANITE グラニットと警察署で出ていたので舞台は近く?
勝手に関連作『ロスト・イン・トランスレーション』『卒業』
TOMATOMETER95 AUDIENCE76
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