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駅までの道をおしえてのkiritoのレビュー・感想・評価

駅までの道をおしえて(2019年製作の映画)
3.5
【駅で待っている。】

「最後じゃない。また絶対会えるんだ。」

新海誠監督の娘さん「新津ちせちゃん」・・・神童か?ってくらい演技力がずば抜けていて出演作抑えたくなった。化け物すぎる。

8歳になるサヤカは大好きだった愛犬ルーの帰りをずっと待っている。ある日、ひょんなことから幼い息子を亡くした老人フセさんに出会い、「命」についてまた触れることになる。

これは・・・正直評価がめちゃくちゃ難しかった。
ものすごくよかったところとものすごく悪かったところが共存する映画は判断が難しい。

まず、ルー役の犬がめちゃくちゃ可愛くて、本当にずるい。しかし、これはいわゆる「愛犬の死」の物語を直接書いているわけではなく、「ワンダフル」シリーズに描かれるような類のものではない、あくまで間接的な描写だった。

気になる点のひとつは8歳という設定とはかけ離れた大人すぎるサヤカ像にある。8歳なんてもっと泣きじゃくっていいんだよと思うのに、彼女はいろんなことを受け入れるし、親の言うことも聞くし、自分の考えをしっかり持っていてある種素晴らしいと思うと同時にこんな8歳はいないと思ってしまうのである。もちろん子役の演技なのだが、この絶妙な違和感は映画中終始付きまとう。

物語はサヤカとルーで見つけた秘密の場所・・・に埋まっていた鉄のレール(後からそれは線路だと判明する)をみつけることにはじまりそれが最終盤の伏線となっているのだが、この最終盤の描写が如何にも賛否両論分かれるだろうなという描写で(実際レビューも分かれていた)ここを受け入れられるかどうかが評価の分かれ目になる気がする。自分はちょっと白けてしまった派。ここまで長い尺をとらなくても十分その意味はわかるし、邦画ならではの全部説明しました感がすごかった。

とはいえ、これはサヤカの視点から描かれる物語であり、彼女のひと夏の成長譚である。
どんな生き物にも必ずやってくる「死」というものに対してどう向き合うかという点もそうだが、子どもの時にこれに遭遇することはその人の人格形成をする上でやはり大きな事象だと思う。
突然いなくなったルーはサヤカと直接のお別れをしていない。
どこかで帰ってくるのではないか?と淡い期待を持つ一方で、ルーは「もう死んでいる」ということもちゃんとわかっていたはずだけど、おじさんと「海」に行くことがやはり彼女にとっては大きなことだったと思う。

これは賛否両論分かれる映画だと思うしレビューも難しい作品だが自分はやはり泣けもしたし、最終的には賛に票を投じたい。

2020.5.1
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