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アンフレンデッド:ダークウェブのhorahukiのレビュー・感想・評価

3.1
SNSホラー『アンフレンデッド』の続編。う〜ん…何も考えずに見る分には楽しめる作品だと思うけど、前作と比べてしまうとかなり志の低いところで満足しちゃったように感じました。

ダークウェブというサブタイトル通り、今回は深層ウェブに接続してしまったがためにエライ目に合うお話。幽霊は全く関係ありません。題材的には凄く面白いんですけど、アイデア以上のものは感じ取れなかった。

サスコ監督は本作を製作するにあたり、出来る限り前作とは違ったことがしたかったと語っています。続編のかたちを取りつつもあえて対極に位置するものとして本作を製作しつつも、前作と同様にネットからの侵略を描いたのは面白かったと思います。

前作はアイデア頼りの作品ながらもPCの同一画面内にキャラクターの外面と内面を並存させ多層的な心的情報を同時に提示したり、PC画面特有の表現により観客の感情を揺さぶり続ける等、その演出方法に優れたものが多く、単なるティーン向けホラーに止まらない高い完成度を誇っていた。内面をそのまま可視化したような、PC画面でしかできない新時代の表現方法を存分に活かした作品だったからこそ、全編PC画面のみという大胆なやり口に必然性が生まれていたと思います。

その点、本作では「アイデア頼り」という域を出ていないように思う。前作でPC画面のみによって、いかに多重的な表現ができるのかを見せつけられたが故に、複数の情報を提示しつつも結局は一画面でひとつのことしか表現していない本作の複雑なだけで浅い演出の数々に凄くガッカリした。だからこそ本作にはPC画面でなければならない必然性が全く感じ取れなかった。

ただ冒頭はかなり良かった。PCのログイン画面からスタートするのですが、そこに異常性の種を蒔くことで観客に違和感を植え付け、それを引き摺ったまま展開することにより物語へと引き込み興味を持続させる。ただそれ以降は最近多く作られているSNSホラーで良く描かれる「ネットの怖さ」の焼き回しを見せられてるような気分になった。

前作はもちろんネットの怖さを扱っていたのですが、それだけに留まらず、PCやネット・SNSに散らばる情報が人間の心の深層と極めて近いものとなりつつある現代において、外部からのPCへのアクセスが人の内面へのアクセスと同視され、PCに無断アクセスしてくる幽霊の存在が人の内面へもアクセスするというテクニカルな展開をしてたからこそ設定と物語に必然性があり面白かった。

それに対して深層ウェブの深淵を描いた本作は、違った方向からのネット世界による日常の侵食を描いていて面白く感じた。ネットは現実からある程度隔てられたものであるにもかかわらず、自分の部屋というプライベート空間を決して逃げられない牢獄へと変貌させてしまう怖さは非現実的ではあるのだけど、深層ウェブに対する秘匿されたオカルトじみた印象により妙に現実味を帯びたものとして迫ってくるのも良かった。

ただ、人の内面をPC画面に投影したパーソナルな物語だった前作と比べ、本作がPC画面上だけで展開することの必然性が見えて来ないのが残念だった。上に書いた表現方法についてもそうだけど、侵食された現実を描く本作の場合、PC画面から離れた方がより実感のある恐怖として伝わったのではないかなと思いました。

でも、そこまでのハードルを設けずに普通のティーン向けホラーとして見たら楽しめる作品だと思います。監督の意向からは外れてしまうけど…。
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