虎舞羅ーコブラー

斬、の虎舞羅ーコブラーのレビュー・感想・評価

斬、(2018年製作の映画)
3.8
塚本晋也監督が20年に渡り温め続け完成し、ヴェネツィア国際映画祭を震撼させた時代劇。

これは中々の衝撃作。今までの時代劇では描かれてこなかった、「人を斬る」というテーマを強烈に表現しています。

主演は池松壮亮さんと蒼井優さん。
池松さんは「人を斬ることが出来ない」若き侍を演じます。稽古中は力強く普段は物静かで優しい青年ですが、人を斬る事が出来ません。江戸に行くという事を告げられると、震えと動悸が止まらなくなるなど、恐怖を感じているのが分かります。そして、ラストでの演技には震えましたね。あの後ろ姿のシルエットだけで、静かなる狂気を表現していました。
そして監督である塚本晋也さんも江戸の侍として登場。こちらは池松さんとは対照的に、一切の躊躇なく人を斬っていきます。動脈を切り「失血死までの間、これまでの人生を振り返ってください」と言い放つシーンも。

従来の時代劇であれば、塚本さんの様な侍が普通とも思えますよね。しかしこの作品では、現代的な思想を池松さんの侍姿を通して織り交ぜています。
刀を持って人を斬る。それを現代の価値観を踏まえ、いかなるものかを問いかけてきます。リアルな刀の刃物音も、その問いかけの重さを倍にしていますね。

蒼井優さんの「その刀は飾り物ですか!?」というセリフがありました。侍は現代では警察や自衛隊ともとれると思います。警察や自衛隊の持っている銃器が、ただの飾り物になる世の中を願っています。