千年女優

斬、の千年女優のレビュー・感想・評価

斬、(2018年製作の映画)
3.5
天下泰平の時代にも終わりの足跡が迫る江戸時代の末期。没落武士の男で、江戸に近い山奥の農家に身を寄せながら剣を磨く都築杢之進。その実力を見込んだ剣豪の澤村から京都の動乱への参戦を誘われるも果たして自分に人を斬れるのかと躊躇する彼が、世話になった農家の娘ゆうを巻き込んだ騒動において迫られる決断を描いた時代劇です。

個性派俳優として多くの作品を彩りながら監督活動に勤しんで低予算で自主製作に近い規模ながらユニークな観点で国際的にもファンの多い塚本晋也が「人斬り」に逡巡する若者をテーマに制作した2018年公開の作品で、池松壮亮に蒼井優という配役で臨んだ物語が注目されてヴェネツィア国際映画祭でコンペティション部門に選出されました。

主題自体は目新しくはなく、そもそも斬れる/斬れないは緊急性や痛がりかという状況や本能に依存するためあまり思想や信念として云々しても致し方ないところです。それを心得てあくまで現代人をその時代に放り込むコンセプトとして緊張感を演出していて、詭弁に逃げない作劇とバイオレンスで塚本映画としての気骨を見せている一作です。
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