とむ

斬、のとむのネタバレレビュー・内容・結末

斬、(2018年製作の映画)
2.5

このレビューはネタバレを含みます

塚本監督が演じる侍が言うように、
池松が彼を切ってしまったことで彼は「人を斬る」というある種の呪い・煉獄に囚われてしまうっていう、うまく作れば面白い題材ではあるんだけど、
登場する人物が軒並み愚かというか、もはや馬鹿なんじゃないかっていうのばっかりで中盤からは正直辟易していました。

塚本晋也が演じてた侍は人を斬ること=強さと勘違いしてる歳だけ喰って考えを放棄した老害にしか見えないし、
蒼井優はその都度その都度でフラフラ意見を変えるあまりにも身勝手な百姓娘にしか見えないし、
池松壮亮演じる浪人は、途中まで「人を斬らないことこそ本当の強さだ!」という路線で行くのかなと思いきや、
「人を斬れるようになりたい!人を斬れるようになりたい!(ry」のシーンでげんなり…

とてもリアリティのある、生きた人間たちには見えませんでした。


あと、技術的な面も酷いと思います。
前作「野火」では、人を喰らう時の返り血がカメラのレンズに飛び散るという演出が、まるで戦争がそこで行われているかの様なある種のドキュメンタリックな写し方として上手く生きていたと思いますが、今作との噛み合わせは最悪でした。

まんま、山形の庄内映画村で役者たちが殺陣の練習風景を写したドキュメンタリー映像にしか見えず、
開けた草原で木刀での斬り合いを移動車から撮影されたと思しき映像も
「これ車つかってんのかな…」と、江戸時代とかけ離れた演出に最初から意識を映画に入れ込む余地がありませんでした。

特に最悪だったのはゴロツキ浪人たちとの剣劇シーン。
いくらなんでも手持ちでブレすぎですし、
暗すぎて何が起きてるのか一切わからない。
ただただストレスが溜まるだけの演出でした。


良かったところももちろんあります。
冒頭の指の付け根が裂けるような切り方とかは、時代劇に対して「でもこれって結局人殺してんだよな」と思ってた身からするとなるほどと思わせる見せ方でした。

冒頭のドキュメンタリックな写し方が映える鍛治のシーンや、
塚本晋也が切られた際に臓物がこぼれ落ちる演出、
「斬」というタイトルの出方のインディペンデント感はかなり好きな演出ですし、

エンドロールに入る前の蒼井優の叫び、
からのエンドロールの最中に映し出される「池松壮亮の視界」等の演出は、
彼の逃れられない煉獄に囚われてしまったという悲しみを上手く醸し出していて凄く良い映像だと思いましたが、
肝心の内容が…。

前述した、
いくら刀で正義を示しても、結局のところは人を殺す行為だという、
前作「野火」と通じるテーマを感じましたが、
幾ら何でもそれに対して現代社会とテーマが乖離しすぎてて何がやりたいのやら…。


池松壮亮のオ●ニー…
とむ

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