ヨッシー

ザ・ファブルのヨッシーのレビュー・感想・評価

ザ・ファブル(2019年製作の映画)
2.2
『せっかくのアクションが台無し...』

『週刊ヤングマガジン』で連載中の人気漫画を実写映画化。

天才殺し屋の“ファブル ”は殺し屋を休業して大阪で普通の暮らしをすることになるが、大阪で知り合った女性をがヤクザに拉致されてしまい、彼女を助ける為不殺の救出ミッションに挑む。

監督は『ガチ星』『めんたいぴりり』の江口カン。
主演は岡田准一。

近年『るろうに剣心』や『亜人』など、邦画でもいいアクション映画が増えている事もあって、期待していた作品であると同時に、『GANTZ』『ガッチャマン』『進撃の巨人』など数々の漫画実写化を駄目にしてきた脚本家である渡辺雄介脚本作として気になっていた、いい意味でも悪い意味でも注目の作品。

まずアクションに関してはかなり頑張っていたと思う。
終盤の救出ミッションは割と狭い通路を生かして敵を1人づつ倒していくアクションは良かったし、動きにもしっかりとキレがあり、『キングダム』のような不自然な動きもなく普通にいいアクションだった。
他にも壁をよじ登るシーンはすごく良かったし、福士蒼汰演じるフードの男とのボス戦も上下の空間をうまく使った銃撃戦、敵の弾をかわしながらのハイスピードの打ち合いはかなり見応えがあった。

アクション以外だと、決戦前のガレージで銃や弾をDIYするシーンも楽しかったし、島の家にファブル が乗り込んだ時の家の状況から何が起きたかをイメージしていくシーンなんかは『96時間』みたいで良かった。

ただし、せっかくアクションがこれだけ頑張ってるのに他が酷い。
特に問題なのは脚本。やっぱり渡辺雄介脚本がかなりの問題となっている。

本作は殺し屋として過酷な世界で生きてきた佐藤がごく普通に日常を送るというカルチャーギャップコメディの要素を持つ作品のはずなのに、そこが全然生きてない。
なにせこの佐藤は殺し屋としての自分を完全に抑えることができているから普通の日常を送るのになんの難しさも感じない。
例えば、殺し屋としての本能を抑えられず、ぶつかった相手を反射的にボコボコにしちゃったとか、観察眼が良すぎて気づかなくていいことに気づいて場を氷付かせてしまうとか、殺し屋の世界と日常の常識の違いみたいなので笑いにすることができるのにそれが弱過ぎる。

肝心のメインの話の救出ミッションも始まるまでが長過ぎる。本編に3分の2過ぎてからじゃ遅過ぎるし、それまで全然見せ場がなく、つまらないギャグと佐藤と岬の薄い交流が淡々と続くから退屈。
佐藤がイマイチ感情を表に出さない上にちょっとマシンみたいなキャラのせいでボスに殺されるリスクを負ってでも彼女を救出する決意をするシーンになんの感情も湧かない。

とりあえず原作から今回の話に必要なところを切って貼り付けたみたいな適当な構成に感じて脚本の雑さが丸わかり。

他にもとにかく無駄な要素が多すぎる。
佐藤のバイト先の盗撮してたやつとか、インコとか、妹設定組んでる洋子とかいらないんじゃない?
特に洋子は佐藤とのコンビ感も全然ないし、救出ミッション中もナビゲートするのかと思いきやただのツッコミ役だし必要ないよね。原作ではメインキャラなんだろうけど、今回の実写版で全く必要ない。

あととにかくギャグが滑りすぎ。宮川大輔が演じてる芸人にギャグはホントきついし、岡田准一の全裸や猫舌ネタは大して笑えない上にクドい。コメディタッチの作品としては致命的につまらない。

前述した通りアクションは確かに悪くないんだけど、まともなアクションが序盤と終盤だけなせいでとにかく中盤が退屈だし物足りない。
それと冒頭のアクションの敵との距離や部位なんかを字にして出すあの演出は何?正直ダサいし、そこまで奇抜なことやるんなら終盤のアクションでもやれよ。

役者陣は全体的に特に文句なし。特に柳楽優弥はいい演技だった。
それだけにもったいない。

どうせなら前述した無駄な要素を消して、ギャグも減らして、話は多少雑でもいいからアクションにもっと振り切った構成にして上映時間100分以内に収めていればB級アクション映画として普通に面白作品になれたと思う。

なんども言うけどアクションは決して悪くないし役者陣もいい演技をしてるからもっとちゃんとした監督と脚本だったら十分に面白くなったと思う。
少なくともとりあえずなんか早く動かしてけばいいアクションとか思い込んでいる『キングダム』よりはアクション映画としては高い志を感じる作品ではあるので、今後も日本のアクション映画には期待は持てそうかな。
あともう渡辺雄介には脚本を書かせないのがオススメです。
ヨッシー

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