さしすせ

さよならくちびるのさしすせのネタバレレビュー・内容・結末

さよならくちびる(2019年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

"ハルレオ"の日本縦断 全国7都市を回る解散ツアーを追うロードムービー。

小松菜奈さんの歌声を「坂道のアポロン(2017)」の最終シーンから熱望していた。
「あのこは貴族(2021)」から引き続いての門脇麦さん。
成田凌さんは最近だと「チワワちゃん(2018)」「愛がなんだ(2018)」の印象が強く、まめに働くローディー姿が見慣れなかった。ジッポと水色のギター(ナッシュギターなのか、テレキャスターなのか)が刺さる。

(道中の"レギュラー141円"の電光表示に驚愕。
確かに3,4年前はそのくらいで給油していたかもしれない。)

ツナギ姿の"ハルレオ"2人がマイク前に立ち、自己紹介もそこそこに歌い始める。
"さよならくちびる 私は今誰に"
ハルの高音とレオの低音がきれいに重なって耳に飛び込んで来た時、一瞬、体温が上がったような気さえした。

ライブハウスの前に整理番号順に並ぶこと。長テーブルにこじんまりと並べられた手売りのCDやグッズ。登場を待ち侘びる手拍子のテンポがどんどん早くなること、SEが少し大きくなり手拍子が拍手と歓声に変わること。曲間のアツくてサムい語り。
どうしようもない日々をどうにかするために、歌はあって、音楽はあって、だからライブハウスに行っていたんだと、思い出した。

「志乃ちゃんは自分の名前が言えない(2018)」での南沙良さんと蒔田彩珠さんのデュオもよかったが、小松菜奈さんと門脇麦さんの調和もそれに並ぶ素晴らしさがあった。
歌声で言うと、"ハルレオ"ファンとして路上インタビューに応じていた女子高生もいい。
調べてみたら、日髙麻鈴さんというさくら学院の元メンバーの方だそう。そしてあの歌唱自体アドリブだと知りさらに瞠目。

作中、レオの髪型の遷移と、そこに潜む想いをつい辿ってしまう。
ハルと出会った頃のロングヘア、ハルとお揃いのボブヘア、ハルよりも短いショートヘア。
憧れた相手すらも追い越すように変わり続けるレオと、その隣で悠々と変わらないことを保ち続けるハル。

"ハルレオ"初期の"たちまち嵐"はユニゾン。
次の"誰にだって訳がある"は、路上ではユニゾンだったものが、ライブ披露時には1番がハル、2番がレオ、サビ部分は2人のユニゾン。
最新の"さよならくちびる"はコーラスで、ギターも別コード。志摩のエレキサウンドも加わる。
この歌い分けも一種の成長を示すのかもしれない。

夜の描写が印象的だった。
ジープ ラングラーの窓から顔を出し風を浴びるレオ。
レオがハルにキスをした自販機前。
ベンチでイヤホンを分け合うツナギ姿の女子高生2人の背中。
だからこそ、函館でのラストライブ後、夜明けの東北道を東京に向かって突き走る3人の未来が気になって仕方がないのだ。

「シング・ストリート 未来へのうた(2016)」に似た感傷が残る観賞後。
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