MasaichiYaguchi

さよならくちびるのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

さよならくちびる(2019年製作の映画)
3.8
レコード店のキャッチコピーで “NO MUSIC, NO LIFE. ”というのがあるが、「黄泉がえり」の塩田明彦監督がオリジナル脚本で、小松菜奈さん、門脇麦さんのW主演で描いた青春音楽映画は、居場所を求めて足掻く彼女らの姿や、その楽曲に込められた2人の思いがストレートに心に響いてくる。
本作は、解散を決めた西野玲緒と久澄春子による女性デュオ「ハルレオ」が日本縦断のツアーを行っていく模様をロードムービーとして展開していくが、その中で彼女らの出会いや「ハルレオ」結成、彼女らをサポートするローディの志摩一郎の加入、そしてこの3人、レオ、ハル、シマの過去や抱えているものをカットバックで描いていく。
映画は主要3人を詳しく紹介せず、余白を残してほのめかして描く。
だから逆にその余白から3人が抱えた孤独、葛藤、挫折、切ない思いがヒシヒシと伝わってくる。
事情は夫々違っても孤独な魂を抱えた3人はユニットの中で惹かれ合い、思いが交錯していく。
衝突することもあるけれど、このように惹かれ合ったユニットが何故“解散”するのかも本作は明確に提示しないが、ストーリーの進展と共に3人の関係性やそこに漂う“雰囲気”で何となく察せられていく。
果たして3人の心の旅とも言えるツアーの“ゴール”の先には何があるのか?
ギターと歌唱の練習を重ねて本作に臨み、秦基博さんとあいみょんさんによる楽曲を見事に披露した小松菜奈さんと門脇麦さんには聞き惚れてしまう。
本作からは、音楽は空腹を満たすことは出来ないかもしれないが、心の隙間を埋めて前向きにさせてくれることを改めて感じた。