やまもとしょういち

クロッシングザブリッジ 〜サウンドオブイスタンブール〜のやまもとしょういちのレビュー・感想・評価

3.8
西洋中心の視点に立ったときに取りこぼされてしまうであろう人々の匂いや声、その血に流れる歴史性/民族性を音楽と共に切り取ったイスタンブール音楽のドキュメンタリー。

このテキストを書いている2020年11月時点で、トルコポップの女帝と呼ばれるセゼン・アクスがSpitify上に244万人以上のリスナーを有していたり(某歌舞伎町の女王は68万人、King Gnuは188万人)、モサいおじさんたちのバンドであるBaba Zulaは23万人(Suchmosより多い)と、イスタンブール音楽が土着的なものを取り込みながら現代的な価値を打ち出していることに驚かされる。

こういった日本人の文化的な背景とも、流行とも交わりの薄いであろうドキュメンタリーが日本語字幕で作られていること自体が驚きであるし、今現在、この国にはそんなことをやれるだけの金銭的余裕も文化的余裕を失ってしまったことを思い知らされた作品であった。反語的に、日本の文化がいかに失ってはならないものを切り捨ててきたかを気付かされました。