Eike

The DomesticsのEikeのレビュー・感想・評価

The Domestics(2018年製作の映画)
3.2
流行した「終末ジャンル」の作品群を経て現在のトレンドは「その後」を描くPost-Apocalyptic的な物語に移行した印象がある。
大きなきっかけはやはりゾンビ蔓延による文明崩壊後の世界を描いたWalking Deadの成功だと言う気がするのだが、復活したMad Maxの成功もあるかな。
文明と社会秩序の崩壊を描いた作品群がジャンル映画ファンの枠を超えて一般大衆にウケるというのはやはりそれが魅力的に映ると言うことな訳で、我々が日常に閉塞感を抱えている証左と言えるかもしれない。

本作において「世界の終り」は戦争によってもたらされたるという設定なのだが、その部分はオープニングシーンで簡潔に描かれているのみで、その点を詳細に描くのが目的の作品にはなっていない。
Post-Apocalypticなお話自体はもう特段目新しくも無い訳で、その上で作品としての個性をどう打ち出すのかが、面白い作品にするためのポイントと言える。
本作が低予算作ながら、それなりに楽しめるモノになっているのはこの設定に過剰に頼り過ぎず、ちゃんとアイデアやこだわりを伺わせる展開/描写が盛り込まれているから。

文明崩壊によって何もかもが一気に混沌に落ちるという設定は便宜的ではあるが本作の描写には同時に一定の範囲で「リアル感」がある。
社会システムが崩壊したからと言って皆が我先にマッドマックスや北斗の拳の世界に突入していくわけではないのだ。
本作の巧さの一つはその点を生存者達のアイデンティティとして「グループ」に分けて明示して分かり易く見せている点にあり。

タイトルの「Domestics」は主人公夫婦の様に「正気」を保っている人々の総称で、カオスの中にあっても秩序と崩壊以前の市民生活の価値観を保持し続ける人々のコミュニティを指す。
それに対して自ら弱肉強食の価値観に身を投じたグループも存在する訳だがこちらはさらに細分化されていて、互いにテリトリーを拡大すべく抗争しているという設定には意外や、奇妙な説得力がある。
それは、その各グループの描き分け部分にちゃんとこだわりが伺えるからで、結果的に作品としても楽しめるものとなっている。

動物の仮面をかぶったグループ、常にシーツを頭からかぶっている「ゴースト」、人の生死を含めて森羅万象、あらゆることを賭けのネタにする「ギャンブラー」など等。
物語は主人公夫妻が無線による連絡が途絶えた妻の実家に向かう様を描いているが各地域は凶暴なグループがテリトリーを巡って抗争を繰り広げていえ危険この上なし。
二人は車で慎重に進むのですが、本作の物語はこの危険な道中でこの二人が直面する危機を機転を効かせてサバイバルしていく様を描くものになっている。
設定ありきの作品の多くが設定を固めはしたものの、その後の展開は単調になりがち。
その点、本作は前述したそれぞれのギャンググループによる特徴あるサスペンスだけでなく、意外な形で不意にショッキングな展開が繰り広げられるなど、良くできたB級作らしさを満喫できるものとなっています。
もちろんB級作らしい都合のよさも目につきますが(普通人であるはずの夫の戦闘能力が異様に高かったり)目くじらを立てる程ではない。
K・ボスワースの演技は相変わらずアピール度に欠けるきらいもあるが今回は許容範囲でした。
Eike

Eike