ひさしぶりに思わず付けてしまった4.7超え。
震えた。心が震えっぱなしの2時間だった。
人種差別を題材とする作品は幾つもあるけれど、その中でも今まで観た作品の中で、個人的にはトップクラスの秀作。
まず冒頭から震えてしまう。我が子を守る為にこんな教育が必要だなんて。「こんなのおかしい」「理不尽だ」と解っている事ですら、命の為に「そういうもんなんだ」と教えなければならない。そういうのって結構今の世の中にもある。
この作品を素晴らしいと思った点は大きく括ると一つにまとめられるような気がする。
あくまで知識不足な私の感覚になってしまうけれど「飾らない絶妙なリアルさ」とでも言うんだろうか。どこを取っても、綺麗事になんかならないというか。
母親の態度や言動だってそう。美しくなんかない、一見自分の思い通りにしようとするような様子だって、娘を思う母親って実際これがリアルだと思う。
父親の子どもたちに対する言葉の一つひとつも、全てが誠実で綺麗事のカケラさえもなくて、この父親なら信じてどこまでも着いて行っちゃうな。
それにしてもとにかくお父さんが格好良いの。本当に格好良い。
今回の事件については黒人が被害者で、観る者としては黒人に寄り添った気持ちで観ることになると思いきや、黒人のデモや主張は全然美しくなんかなくて、むしろ迷惑で、あれ、重体患者運んでる救急車さえ止めるだろって感じで。
中でも凄く震えたシーン。スターと話す叔父警官の話が凄く印象的だった。
白人警官が撃った事を100%悪だとは、やっぱり言い切れなくて、叔父警官の綺麗事じゃない誠実な言葉と、最後の質問に対する回答が凄く胸に来る。それ以外のどんな答えも嘘っぽく聞こえる、そうだよね、って感じだ。
ー憎まれることより、憎み合うのが罪だ
連鎖を断ち切る勇気、それこそが強さ。
最後のシーンは本当に鳥肌が止まらなかった。
別に、撃ちたいわけじゃないんだよな、ってその表情を見たら気づいてしまう。
ほんとうに。憎み合う事はなんの解決にもならない、それどころか事態を悪化させるだけ。
わかり合えなくてもいい。話をしよう。
言葉を聞こう。話を聞こう。
憎まれても憎まない勇気と強さを持とう。
人種差別に限った事じゃない。
16歳の少女から、これから生きていく上で、きっと忘れてしまう瞬間もあるだろうけど、間違えながらもその度に思い出すべき大切なことを、教えられた、そんな凄い作品。
いつか憎しみが止まらなくて、赦して前に進む事が難しくなってしまった時には、またこの作品を観て16歳の少女に何度でも助けられよう。
それにしても、カリルのエクボには私も参っちゃった。