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ヘイト・ユー・ギブのesewのレビュー・感想・評価

ヘイト・ユー・ギブ(2018年製作の映画)
3.5
2020.7/23

すごい良かった!BLM運動参加者たちのムードを理解するのに役立つから今こそ見た方がいい!

子供の頃に目の前で人が死ぬのを見たのに、怖くて犯人のことを誰にもいえなかった。それをずっと良心の呵責として抱えていて、逡巡しなければいけない高校生、高校生になって今また人が死ぬのを目の前で見て、今度こそは自分の身に危険が及ぶとしても公の場でキチンと証言しなければいけないと決心せざるを得なかった高校生なんていう悲しい話があるのだろうか。引き受けなきゃいけない重みが重すぎる。


日本人が日本語で語るアメリカのBLM運動にイマイチ感情移入できない理由を、主人公の学校でのプロテストにかこつけたサボりが説明してくれる。


理解してないんじゃないかと。本当に必要なのは、もっと耳を傾け、もっと状況や背景や人間を理解しようとする態度を尽くすことなんじゃないかと。


BLMっていう運動に参加するかどうかより、こんなに魅力的で最高の笑顔を持つ子が、物語後半ではずっと怯えて、泣いて、怒って、逡巡して、ぜんぜん笑顔になれない現実がそこにあることなんじゃないかと。


キングがすんなり退治されるのは物語としてはご都合主義だろと思わざるをえないので4.0点にできなかった。麻薬王が悪い、そいつさえ排除すれば平和になるみたいのは嘘でしょ。次のキングはすぐ生まれるのだから。

最近いつの頃から、黒人が運転してて車を警察に止められたらダッシュボードに手を置いて決して警官に逆らうな(逆らったら高確率で射殺されうるっていうリアルな恐怖からくる自己防衛)っていう描写が映画に出始めた、本作にも冒頭と中盤にある。最近見たイーストウッドの『運び屋』にも出てくる。昔は全然見たことなかったから、ここ5年ぐらいでこの描写の元となるアメリカ社会全体に与えた衝撃的な出来事があるんだろうけど、そのキッカケのクリティカルな出来事だか事件が何なのか日本にいる自分にはわからないのが残念。


白人が悪とは一方的には描かない、黒人が善とは一方的には描かない。ドラッグディーラーが悪とも一方的には描かない、正義の弁護士が善とも一方的には描かない。警察官が悪とも善とも一方的には描かない、それぞれが逡巡し、理由があってそれぞれの立場で生きている、そこが良かった。例えばお母さんのゲットーに対する嫌悪、例えばお父さんの白人彼氏に対する人種差別的態度、例えば白人彼氏が両親に会いに行くと面と向かってあのタイミングで言うこと、例えば正義のために少女を危険に晒しうることに十分な配慮がなかった弁護士、例えば警官である叔父さんの「手を上げろと言う」と言った時の表情、いろいろな立場が多角的に描かれている。庭に子供を並べてああ言うことを言わなければいけなかったお父さんの心情を思うとキツい。

ナイキとレンジローバーがデカデカとプロダクトプレイスメントしてるけど、社会派の映画でそーいうのやるのどうなの?セリフにまで自社製品上げの文言入れて。逆にダサいしウザいし邪なイメージになった。やるならもっと控えて出資すればいいのに。こういう作品の制作に出資することはカッコいいことなのに、余計なビジネス上の即時リターンをこれでもかと狙ってダサいイメージを集めてどうすんねん。
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