おいなり

劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデンのおいなりのレビュー・感想・評価

4.1
いろいろあってタイミング逃して観れてなかったヴァイオレット・エヴァーガーデンの上映が終わりそうだということで、急いで観てきました。鬼滅の刃は2回観たんだけどね。

めちゃくちゃよくできた脚本に、死ぬほど緻密に描かれた作画。劇場版でキッチリそれらがワンランクアップしていて、考えうる限り最高の完成度。観客が観たかったものをキチンとみせてくれるという意味で、小さな世界に向けた映画としてはほんとに100点満点に値すると思います。吉田玲子の脚本にハズレなし。
大仰にスケールアップという感じではなくて、あくまでテレビシリーズと同じトーンで淡々とやってる感じが逆によかった。ヴァイオレットのやってきたことが、ずっと先の未来でも誰かの心を癒しているのだと言うことが、彼女の軌跡を追いかけた者の一人としては単純に嬉しかった。
戦後の技術の進歩とともに、「便利さ」や「豊かさ」によって人の手の暖かみが端役へと追いやられていく。そんな時代の変わり目にあって、それさえも肯定的に描いていることがとても印象的。

ぜんぜんひとつも文句もないなと思ったけど、すげー泣けるシーンでたぶん大人の女性声優が3歳くらいの男の子を一生懸命演じてるのを聴いて、なんか急に現実に戻された感があった。「オニーシャンってwwww」みたいな、他のアニメだったらそんな気になんなかったかもしれないけど、写実性の強い作品だからこそなんかそこだけアニメ的なデフォルメが違和感あって、一瞬だけ冷めた。いいシーンなんだけどね。

取り扱ってるテーマは陳腐ですらあるんだけど、実直に向き合って作られているからこそ、ズシンと重みがある。そして、そういうものを作れる素晴らしい人々があのような悲劇に見舞われたことを思うと、本当に本当に胸が痛む。
本作は、亡くなられた方、その意思を継いだ方々、すべての人々にとって特別な、一生残る手紙と言えるのかもしれない。きっと本作も今後永きに渡って、誰かの心を暖め続けるだろう。それだけが救い。

見終わったあと、自分も誰かに手紙を書きたいなと思わされる。素敵な映画です。
おいなり

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