HIGHINLET

劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデンのHIGHINLETのレビュー・感想・評価

4.0
素直になれない人たちの感情の爆発と
言葉では語り尽くせない息を飲む映像美に圧倒される。

戦争孤児となり軍に拾われたあと、
戦闘マシーンとして生きてきたヴァイオレット。

恩師・ギルベルト少佐が“死に際”にかけてくれた「愛している」の意味を理解するため、
“自動書記人形”代筆業を始める。

始めは軍事気質が抜けず、言葉の意味をそのままにしか受け取れなかったが、
仕事をする中で言葉を覚え、徐々に人の心を汲み取り自ら行動するようになる。

テレビアニメでは、生真面目に“武器”から代筆業に携わる“ドール”に成長するヴァイオレットちゃんを自然と応援したくなったし、手助けしたくなった。

そんな彼女の原動力、
彼女の全て、彼女の世界そのものだった少佐。

劇場版でも、代筆業をするきっかけとなった少佐とは会えずじまいで、誰一人彼女を癒せずにいた。

そんなとき、死んだはずの少佐の手がかりを見つける。

もう、どうあがいても泣く展開にしかならない。

ヴァイオレットちゃんの今までの努力で手に入れた人の感情を読み取れる力が仇となる。

少佐の“ヴァイオレットを武器として扱ってしまった”という罪悪感を汲み取れて、一歩を踏み出せない。

でも、2人の溝を埋めたのは、ヴァイオレットちゃんの手紙に思いをしたためる技術だった。
その手紙は、少佐の心をえぐる。
ぶつけ合う抑えきれない気持ちに反して、
静けさが漂う海に立つ2人の姿は神秘的だった。

物語の終盤、ヴァイオレットがかつて代筆した手紙を受け取った女性の孫がいる現代へ。

孫はヴァイオレットが代筆した手紙をきっかけに、両親への感謝を綴る。

何世代前に放たれた
人のためを思って紡いだ言葉や思いは永遠に伝わり続ける。

いろんな経緯があって延期となっていたこの作品。
なんとしても形にしたいという思いが、ただの文字が並ぶエンドロールからも伝わり、心に響いた。
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