♪ 世界で一つの 輝く光になれ
私でいい 私を信じてゆくのさ
これはアレですか。
「悪事を働くならば徹底的に」
「被害者に対して同情してはいけない」
「心を鬼にして冷酷に振る舞え」
という教訓を描いた物語ですか。
と言うのもですね。
主人公は非力な女性であり、物語的に囚われる側なんですが、知力、胆力共に加害者を上回っており、臆することなく、隙あらば脱出しようとするんです。
その前向きな姿勢は見事な限り。
けばけばしい化粧と素顔のギャップも個人的にはツボでして、とてもクールな主人公なんです…が。
彼女の強さに加害者が見合わないんですね。
AIの技術に関しては天才的で、ビル・ゲイツのような“凡人とは違う雰囲気”を醸し出しているんですが…色々とツメが甘いんです。非情のように見えて非情に徹しないんです。
あと、主人公を見下していたのもあるんでしょう。「コソ泥の売女に俺の思惑が分かるはずがない」なんて思っていたんです。だから、完全に“悪”になれないんですね。隙があるんです。
でもねえ。それは悪手なんですよねえ。
先にも書いたように、悪になるなら悪に徹する覚悟が必要。人間を人間と思ったら負けです。壊れたときは「あーあ。壊れちゃった」と言って足蹴にする(by野口五郎)くらいじゃないとダメなんです。
って、僕はそういう人じゃないですよ。
悪になり切れない彼に同情しちゃうくらい優しい人ですよ。たまに、ごくごくたまに、高いところから「見ろ!人がゴミのようだ!」とは言いますけど。それは普通の話ですよね。
まあ、そんなわけで。
視点の置く場所によって捉え方が変わる物語。
SFとスリラーの組合せは珍しいですし、それが高次元で融合しているのは舌を巻く限り。しかも、密室劇なのにそれを感じさせない奥行きがありますからね。傑作です。
あと、本作の助演ロボット賞はドローン。
丸くて、羽が生えていて、掃除とか物体の移動とか、色々とこなしちゃうカワイイ奴なんです。あれは一家に一台欲しいですね。