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凪待ちのアイのレビュー・感想・評価

凪待ち(2019年製作の映画)
4.2
白石監督が何かのインタビューで、SMAP解散後メディア出演が減った香取慎吾について「SMAPが続いていたら僕と映画を作ることはなかったと思う。そういう意味では僕にとってチャンスだった」と言っていた。なるほど、凪待ちは香取にとっても”怪我の功名”のような作品なのかもしれない。これまで数々のドラマ・映画に出演してきた香取であるが、「凪待ち」がキャリア最高の代表作となった。これについて否定する方は少ないと思う。大きな体で暴れると迫力があるが、甘さや優しさ、悲哀を内包しているので可哀相になる、嫌いになれない。そして、語る背中、存在感。これらは香取の持つ個性で、唯一無二だと思う。西遊記やこち亀、キャラクターものの印象が強いが、香取本来の持ち味、長所はこちら。ドラマ沙粧妙子の連続殺人犯や蘇る金狼などを思い出した。

白石監督の映画は全て観ているが、「凪待ち」がベスト。東日本大震災とギャンブル依存症の男の喪失と再生をうまく重ね合わせて、リアルだけれどファンタジックに仕上げている。救いや優しさに満ちた映画で、生きていく勇気をもらえる。人間讃歌。同じ年に公開された「ひとよ」も復興、再生、絆といった近いテーマの作品だった。この年の2本は特別に感じられる。犯罪は許されないことだというのは前提で「絶対的にセカンドチャンスは必要」と瀧や新井某の社会復帰を見守っていた白石監督の人間的な大きさ、深い優しさ……そういった本質がよく出ていた。

何度も見返してしまう傑作です。DVD買いました。
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