KentaHamamatsu

凪待ちのKentaHamamatsuのレビュー・感想・評価

凪待ち(2019年製作の映画)
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白石和彌監督ファンなので、今作も抜かりなく。前作麻雀放浪記はあれ⁇という出来だったが、凶悪から孤狼の血に至るまで、本当に素晴らしい。こちらがヒリヒリとするような残虐性を持ちながら、同時にヒューマンドラマを展開する。東映任侠モノをそのままやってしまうとコメディなので、どうやって現代のリアルを持ち込むか、そのバランスが素晴らしい。
今作はポスターにあるようなミステリーなどではなく、今までと同じくヒューマンドラマであり、1人の男が抱える荒波に、文字通り凪が訪れるのを待つ物語だ。そして、そこに通奏低音として東日本大震災を置いてくる。素晴らしい演出の仕掛けだ。
荒波自体は主人公自身が口にする通り、本当にどうしようもなく、見ている間全く許容出来ず、共感を覚えなかった。にも関わらず。白石監督の話運びのうまさにほろりと涙し、心底感動してしまった。
予告編にある「恋人を亡くす」こと自体は、主人公に心情変化をもたらす一つの仕掛けであり、主人公の内面に迫るための一つの出来事に過ぎない演出になっている。そのため、これ自体が大きくフォーカスされず、大きなターニングポイントにもならない。
本当に本当に自分のせいでどん底のどん底まで落ちまくり、その先に僅かな光を見つける。白石監督の共通点であり、物語にカタルシスを生む基本であるものの、きっちり映画にされる点が、本当に素晴らしい。それを実感する作品でした。
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