ケンジモンデン

凪待ちのケンジモンデンのレビュー・感想・評価

凪待ち(2019年製作の映画)
4.4
恋人を(直接ではないが)死に追いやった自責の念、仕事場のストレス、ほぼ病気レベルの依存症を自覚しながらも勝てない弱さ。甘さ。
「俺なんて死んじまえばいいんだ」
そんな自分でも見捨ててくれない人がいる。
どんな絶望の波の中にも凪はある。

作中で結局触れられなかった
「なぜ犯人は彼の恋人・亜弓を殺したのか」という問い。(小説版では明かされているようですが)
震災の後、亜弓は美波を連れて川崎に移り住んでいる。最愛の妻を失った父親を置いてまで。経済的な理由、精神的な理由、想像するしかないけれど、故郷を離れる決断をしたそんな彼女を、犯人は愛し憎んでたのかなと勝手に想像しました。彼もまたあの日からどこかで歪んでしまっていた一人だったのかなと。

そして、凪となる人々の温かさもまた、震災を経てこそ得られたもの。悲劇ではあったけれど、この海と同じように、彼らもまた生まれ変わっていったのだ。だからこそなかなか立ち上がれない彼を支えることができた、と。
人との関わりは時に波になり、心を乱すけど、凪になるのを一緒に待とう。ゆっくりでいいから。

もう、エンドクレジットの背景にやられた。
白石監督の作品は去年からツボってたけど、完全にファンになった。すごい。